2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J04302
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木村 太郎 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | ランダム行列理論 / 可積分系 / 超弦理論 |
Research Abstract |
行列模型は物性論から原子核理論, 素粒子論, さらには物理学に留まらず生物学や経済学, 情報科学などに至るまでの広範な応用可能性を持ち, その普遍的な性質の解明は重要な意義を持つ. 本研究の目的は行列模型における新たな普遍的性質の探求とその応用であり, 従来の分類法では明らかでなかったクラスの行列模型の解明を目指す. 本年度は特に「外場」と呼ばれる項を含むタイプの行列模型の研究を行った. この外場の効果は行列固有値に対して様々な影響を及ぼすのであるが, 本研究では外場と特性多項式が同時に存在する状況を考察し, それらが双対な関係になっていることを明らかにした. 行列模型のスペクトル曲線の言葉を用いると, 外場と特性多項式はいずれもリーマン面に極の構造をもたらすのだが, それぞれ座標系が異なっている. この座標系はフーリエ変換によって入れ替えることが可能であり, 実際に行列模型において外場と特性多項式が互いにフーリエ変換, あるいはラプラス変換によって結びついていることを明らかにした. また外場や特性多項式を伴う行列模型は可積分階層のタウ関数として振る舞うことが一般に知られているが, 外場と特性多項式の双方を同時に含む場合にもタウ関数になっていることを明らかにした. 特に特徴的なのはこの行列模型が1次元戸田格子と2次元戸田格子に対して同時にタウ関数になっていることである. さらにこの外場と特性多項式を伴う行列模型を位相的弦理論の文脈で考察し, リーマン面における位相的ブレーンの交差を実現していることを指摘した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では外場を伴う行列模型における普遍性の探求を目的としており, その点において外場・特性多項式の一般的な双対牲の発見やその結び目理論への応用などの成果を挙げることが出来た. これらは当初の目的である特異点を伴う行列模型の性質解明とは若干方向性が異なっているが, 行列模型の普遍性を探る過程において重要な進展であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた双対性についての結果を, 様々な他の種類の行列模型(異なる対称性を持つ行列模型)の場合へと拡張することが喫緊の課題である. それによってより広いクラスの普遍的な性質を明らかにしていく. また可積分性などの従来とは異なる視点からの研究も行っていく. 他にも, 行列模型の様々な物理系への応用についても同時に研究を進めて行く.
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Research Products
(11 results)