2013 Fiscal Year Annual Research Report
光と栄養が哺乳類における情動の光周性制御機構に及ぼす影響
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13J04372
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大塚 剛司 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 光周性 / C57BL/6Jマウス / 糖耐性 / スクロース嗜好性 / セロトニン / トリプトファン |
Research Abstract |
本年度は情動の光周性制御機構の解明および栄養条件によるコントロール法の探索を行なった。動物は日長から季節を読み取り、様々な生理機能に変化を示す。ヒトでは冬季に炭水化物の嗜好性上昇などの特徴的な症状を示す季節性感情障害(SAD)が知られる。これまでの研究で、C57BL/6J (B6)マウスの情動関連行動や脳内セロトニン含量は日長の影響を受けることを突き止めた。これを受けて、B6マウスがSADの特徴である糖耐性の低下および炭水化物の嗜好性上昇を示すか検討した。その結果、B6マウスは短日条件で糖耐性の低下、スクロースの嗜好性の上昇を示した。さらにグルコースの腹腔内投与により、一過的な脳内のセロトニン含量の上昇を示した。これにより、B6マウスが光周性制御機構解明のための動物モデルとして有用であることがわかった。 SAD患者の炭水化物の嗜好性が上昇するのは、炭水化物摂取によりセロトニンの前駆物質であるトリプトファン(Trp)の血中から脳への取り込みが一過的に増加するためである。Trpの脳内取り込みは、餌中のタンパク質に含まれる大分子中性アミノ酸(LNAA)とTrpの血漿中の濃度バランスも重要となる。このことから、Trp/LNAAが異なるタンパク質源の摂取は血漿中Trp/LNAAを変化させ、情動関連行動や脳内セロトニン含量を変化させると考えられる。この考えに基づき、日長変化前後における幾つかのタンパク質源の摂食がB6マウスにおける情動関連行動に及ぼす影響を検討した。その結果、タンパク質改変餌の給餌により短日条件下での不安様行動、うつ様行動改善、さらに長日条件でのタンパク質改変餌の給餌により、短日条件における不安様行動の発現を予防することができることがわかった。また、長日中にタンパク質改変餌を与えた場合と短日中に与えた場合で血漿中のTrp/LNAAは異なることを発見した。このことから、各季節に適したタンパク質を摂取することが情動関連行動異常の改善や予防に重要であること示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来26年度に行う研究内容についてもすでに着手しており、良好な結果を得ている。今後もこのペースで研究が進むと予想され、申請書に記載した内容以上の研究を行なうことが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、グルコース摂取が脳内セロトニン含量を一過的に上昇させる原因を探索中である。B6マウスにグルコースを腹腔内投与すると脳内のセロトニンが一過的に上昇するが、セロトニンの前駆体であるTrp含量には変化がみられなかった。このことから、急激なグルコース摂取はTrpからセロトニンに代謝される経路の途中段階に影響を与えることが考えられる。SAD患者は糖耐性が低下するが、このこともふまえて糖耐性の低下とグルコース摂取、セロトニン代謝経路との関係について検討を行なう。 また、タンパク質改変餌はその配合割合も重要である。そのため、タンパク質と炭水化物とのバランスを決めるための実験がすでに進行中である。
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Research Products
(4 results)