2013 Fiscal Year Annual Research Report
前周期金属錯体触媒を用いる芳香族基質のアルケニル化、並びにアリール化反応の開発
Project/Area Number |
13J04548
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
喜来 直裕 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ルテニウム / 水素化 / エステル / 多核錯体 |
Research Abstract |
本年度の研究ではまず、Ru(acac)_3と等モル量のトリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンを、過剰量の亜鉛粉末存在下、水素雰囲気下にさらすことで、ヒドリド配位子で架橋されたルテニウム-亜鉛三核錯体が得られることを見いだした。またこの錯体がシュウ酸ジメチルの水素化反応に活性を示すことも見いだした。本反応は亜鉛非存在下ではほとんど進行しないことから、本結果は、ルテニウムと亜鉛の異なる金属の存在が活性発現に重要であるという非常に興味深い知見である。また本知見を元に、トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンを支持配位子として持つアニオン性トリヒドリドルテニウム錯体を一旦合成した後、各種金属ハロゲン化物と反応させることで、対応するヒドリド架橋異種多核錯体が得られることも見いだした。具体的には塩化銅との反応により、ルテニウムと銅がヒドリド配位子で架橋された錯体を得ることができる。 しかしながら上記の反応で得られた一連の錯体はシュウ酸ジメチルの水素化には活性を示すものの、他の単純エステルの水素化にはほとんど活性を示さなかった。そこで更なる活性向上を目的とし、トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンと類似の骨格を有するアニオン性配位子、トリス(ホスフィノメチル)ボレート配位子を支持配位子としたルテニウム錯体を合成した。この錯体を触媒としてP-アニス酸メチルの水素化を水素圧5MPa下行うと、p-メトキシベンジルアルコールが定量的に得られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は概ね順調に進行し、トリス(ホスフィノ)ボレート配位子を用いることで、金属錯体の反応性を向上させることに成功した。その結果、ルテニウム錯体を用いて、エステルの水素化反応が進行することを見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には順調に研究は進展していると考えている。今年度見いだしたトリス(ホスフィノ)ボレート配位子が金属中心の電子密度を向上させ、反応性を金属錯体の反応性を高めるという知見に基づき、ルテニウムのみならず前周期金属にも本配位子を適用し、斬新な反応開発を目指す。大きな問題点は無い。
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