2013 Fiscal Year Annual Research Report
菌細胞塊形成の分子発生機構解明-共生器官の進化発生学
Project/Area Number |
13J04567
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松浦 優 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 菌細胞 / 胚発生 / 細胞内共生 / ヒメナガカメムシ / RNAi / RNA-seq / 共生器官 / 進化発生学 |
Research Abstract |
多くの昆虫種は共生器官を発達させ、生存に有利となる共生微生物をその内部に維持している。本研究では、昆虫-微生物間の必須共生関係の進化の過程で、どのように共生器官が獲得されたのか理解するために、菌細胞塊形成を制御する分子発生機構の解明を目指している。対象として、多様な共生器官が進化したナガカメムシ類を用い、近年発達した遺伝子発現解析技術を駆使して研究を進める。 まず、菌細胞塊の細胞分化と器官形成を制御する遺伝子群を同定するため、ヒメナガカメムシの胚発生時に発現する遺伝子をRNA-seqにより以下のように取得した。これまでの研究により、菌細胞で特異的な発現を示し、その分化と形成に重要であることがわかっているUbx伝子にたいして、RNAiによるノックダウン処理を行い、それらの胚からRNAを抽出し、ライブラリーを作製した。HiSeq2500によりシークエンスを行ったのち、得られた668,589,582リードをアセンブルし、234,029のコンティグを得た(N50=1,966, Max=76,750)。現在、これらの配列に対して、相同性検索とマッピングによる遺伝子のアノテーションと発現解析を行い、Ubxによって発現調節を受ける遺伝子群を探索している。また、菌細胞だけを切り出すレーザーマイクロダイセクションとRNA-seqを組み合わせた手法の予備情報として、胚発生時の菌細胞のサイズと数を透過電顕によって調べたところ、胚帯腹部の側面に直径約10-15umの菌細胞がおよそ3-4個ずつの塊で存在していることが明らかとなった。次に、多様なナガカメムシ類の菌細胞塊の発生学的起源を調べるため、ヨーロッパに生息するナガカメムシ種を採集し、それらの胚を数時間ごとに固定して菌細胞塊の形成過程を観察した。結果、それぞれの形成様式はヒメナガカメムシのそれと大きく異なり、独自の経路を持つことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seqによるシークエンス、多様なナガカメムシ類の胚発生観察については、本年度の計画を達成しており、今後具体的に遺伝子群の発現と機能の解析を行うために必要十分な研究基盤を構築できた。
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Strategy for Future Research Activity |
新規技術であるレーザーキャプチャーマイクロダイセクション法を用いた遺伝子発現の解析については、基礎生物学研究所にて技術研修をうけ、すみやかに導入、実行に移す。多様なナガカメムシ類の胚発生時の共生器官形戒と遺伝子発現の比較を行うため長期間ドイツに滞在し、共同研究者と頻繁にコンタクトをとりながら実験と解析に取り組むことより、研究の協力体制を確立する。
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Research Products
(7 results)