2013 Fiscal Year Annual Research Report
耐熱性酵素の動的挙動と反応性にせまる高温高分解能結晶構造解析にむけて
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13J04626
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福田 庸太 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | X線結晶構造解析 / 金属タンパク質 |
Research Abstract |
申請書の計画通り、耐熱性銅含有亜硝酸還元酵素(CuNIR)の結晶を用いて高温(320K)で回折データ収集をおこない、基質である亜硝酸との複合体の高分解能(1.5Å)での構造決定を行った。この高温構造では、亜硝酸イオンは活性中心の銅イオンに対して、低温(100K)で収集した回折データから決定できた構造で見られた単座配位ではなく、2座配位をしていた。この結果は低温構造と高温構造で基質の結合様式が明らかになった世界で初めての例であり、現在論文投稿準備を進めている。これまで、構造生物学の世界ではモデルタンパク質として、その安定性の高さ、結晶化の容易さなどから、耐熱性タンパク質が広く用いられてきたが、こういった耐熱性のタンパク質を、低温で得られたデータをもとに構造解析した場合、本来の生理的な条件下での構造とは異なる構造が見えてしまう可能性を示唆するものであるため、本結果の意義は非常に大きいと考えられる。また、動的挙動を室温で観測する別の手法として、X線自由電子レーザー(XFEL)を用いた無損傷構造解析もおこなうことにした。耐熱性CuNIRの構造を分解能1.3ÅでCuNIRの構造を決定できた。この分解能はこれまでXFELを用いて決定されたもののうち最高分解能である(これまでの最高分解能はリゾチウムの1.9Å)。金属タンパク質の構造解析が高分解能・無損傷でおこなえるという事実が構造生物学界に与えるインパクトは非常に大きいものであり、現在論文の投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は高温高分解能結晶構造解析のための条件検討のみでかなり時間を要すると考えられたが幸いにも高温でデータ測定ができる条件を見つけられたため、研究は順調に進んだ。のみならず、当初予定していなかった新たな解析法であるXFELによる構造解析がおこなえ、これが動的挙動解析に有用であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究でモデルタンパク質として扱っている好熱菌由来の銅含有亜硝酸還元酵素の基質結合部位は、基質が結合していない時に水が結合しているが、これがX線照射中に2原子酸素分子種に変換されてしまうのではないかという問題と、X線照射により活性中心の銅イオンが容易に還元されてしまうという2つの問題が明らかになった。そこで、高温高分解能構造解析を他のタンパク質にも応用する一方で、上記の問題を解決するため、XFELを用いた無損傷構造解析により動的挙動解析をおこなう手法にも取り組んでいくつもりである。
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Research Products
(4 results)