Research Abstract |
本研究は, 従来の疫学, 心理学, 精神医学で行われてきた抑うつ研究に, 社会学的視点である関係主義的相互作用論による社会と個人との関連・相互作用の影響という視点を導入し, その本質を捉えなおすことを目的とする. 本研究の最も中心的な活動は, 平成26年度に行う調査票調査と分析である. これは, 労働者の精神的健康格差の問題に対し, 自職卑下傾向を用いて, 社会-個人間の関連を指標化し, 労働と抑うつとの関連における自職卑下傾向の影響を研究するためのものであり, 本研究の核となる調査である. よって, その前年度にあたる25年度では, 本調査の実施準備と本研究で検討する理論の補強の2点を中心に, 研究を遂行した. 第一に, インターネットを用いた予備調査である. これは, 26年度の本調査を行う上で必要となる前段階としての調査である. これは, 研究の方向性や質問紙の精度を試し, 傾向を確認することを目的としており, 本調査で得られるデータの確実性を高め, 仮説をブラッシュアップするうえで必要不可欠である. 今回は特に, 職業全体への仮説の一般化への課題に関して重点を置き, 実施した. 対象は, 日本全国に住む, 15歳以上の有職者の男女である. 有効回答数は760だった. 全体的な傾向としては, 既存研究や本研究の枠組みに近い結果がみられているが, 今後もさらなる分析が求められる. 第二に, University of Victoriaにおける客員研究員学生としての研究活動を行った. これは, 隣接領域を融合的に研究する最先端である北米の大学での客員研究員としての研究活動をとおして, 理論の補強をしていくことを目的とした. 特にカナダでは福祉研究はいち早く, また多角的に進められており, 政府・行政と個人の枠組みだけでなく, 企業の社会的責任という観点からの検討も多い. よって, 自職評価と精神的健康格差を研究する上で, 非常に有効な環境となるため, 資料収集, 研究発表を中心に活動した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的に, 25年度の研究予定どおりに研究は遂行されている. 予備調査の実施や, 客員研究員としての活動と並行して, データ分析も進められており, 大きな研究変更の必要性もない. よって, 調査・分析の点からは首尾よく行われているといえるが, 学会発表や論文掲載には至っていないため, おおむね順調に進展している、と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
よって, 今後の研究の推進方策は, 以下の2点に重点を置いて行う. 第一に, 25年度において, 不十分だった学会発表や論文掲載などを挽回すべく, 25年度に実施・分析したデータや, 収集した資料・研究知見をもとにして, 来年度では活発な学会発表とそこでの意見換を行っていく. これは学会発表や論文掲載を通して, 多くの研究者との議論の機会を得るためである. また, これらの活動を反映し, 本調査実施前に仮説の再検討や調査票の質問項目を策定する. 第二に, 本調査の実施である, 労働者を対象とした調査となるため, サンプリングやサンプルサイズなどの課題が発生するが, 学生アルバイトや調査会社を利用して、統計的に有用となるような調査票データを収集する.
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