2014 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導コイルを利用した磁気セイル宇宙機に関する研究
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13J04712
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長崎 陽 京都大学, 生存圏研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁気セイル / 高温超伝導コイル / 磁気モーメント / 最適設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、次世代宇宙推進システムである磁気セイルの高推力化を目的とした高温超伝導コイルシステムの研究開発を行っている。特に、磁気セイルの推力は、搭載するコイルの磁気モーメント(電流×ターン数×コイルが囲む面積)に比例するため、高温超伝導コイルの高磁気モーメント化に取り組んでいる。本年は、高温超伝導コイルの最適設計、および展開式コイルの検討を行った。コイル高磁気モーメント化方法として以下の2種類の検討を行っている。 方法① ロケット搭載可能サイズ(径<4 m)において、起磁力(電流×コイルターン数)増加を目的としたコイル形状最適化(目標:107 A-turn)。方法② 宇宙空間でコイルを展開し、コイル径すなわちコイルが囲む面積を増加させる展開式コイルの検討。コイルには通電電流と自己磁場による電磁気力によって、コイルを外側に拡げる力(フープ力)が働く。宇宙機質量最小化のために、フープ応力を利用したコイル展開について検討する。 構築した解析モデルを用いて、コイル熱安定性を制約条件として磁気モーメント質量比が最大となるコイル形状を明らかにした(研究方法①)。形状最適化の結果、一般的な円形コイルではなくレーストラック型と呼ばれるコイル形状において磁気モーメント質量比が最大となり、従来の研究結果に比べて推力質量比5倍の向上が可能であることを明らかにした。 また、更なるコイル高磁気モーメント化を目指して、宇宙空間で超伝導コイルを展開し、コイル面積の増加を図る展開式コイルについて検討を行った(研究方法②)。径10 m程度の超伝導コイルをロケット内(径4 m以内)に折り畳み収納し、打ち上げ後宇宙空間で展開する。フープ応力を利用したコイル展開の数値シミュレーションにより、高さ方向に折り曲げたコイルが電磁気力によって径方向に拡がり、コイルが展開されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究では、磁気セイル用高温超伝導コイルの最適設計を行い、磁気セイル推力5倍の向上に成功するなど十分な成果を上げている。また、展開式コイルについても電磁気力を利用した新たな方法を提案し、シミュレーションで展開可能であることを確認するなど初期成果をあげている。また、本研究成果に関する発表論文が国際学術誌のBest paperに選ばれるなど、研究成果が高く評価されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、コイル支持材・冷却系がコイル展開へ与える影響を考慮してコイル展開のシミュレーションを行う。また、折り曲げた超伝導コイルの通電特性の測定および、電磁気力を利用したコイル展開についても実験的に検証する。さらに、それぞれのミッションスケール(木星探査ミッション、小型実証機)に合わせた磁気セイル用超伝導コイルシステムの最適設計を行い、他推進系に対する優位性を明確化し、磁気セイルを利用した深宇宙探査ミッション提案へとつなげる。
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Research Products
(5 results)