2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J04998
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 秀斗 九州大学, 大学院数理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 等質開凸錐 / 基本相対不変式 / 左対称代数 / 概均質ベクトル空間 |
Research Abstract |
私は等質開凸錐を研究対象としている。当該年度の主な研究成果は「等質開凸錐の基本相対不変式の具体的な実現を得た」ことである。より詳しく言えば、E. B. Vinberg, Trans. Moscow, Math. Soc., 12 (1963), 340―403により導入された帰納的に構成される多項式と、等質開凸錐に付随する左対称代数の正規分解から得られる情報を用いて、等質開凸錐の基本相対不変式のclosed formulaを与えた。特に交付申請書に記載した「基本相対不変式に対応する1次元表現を具体的に求め, 等質開凸錐が与えられたときにその1次元表現を求める公式を与える」という課題は完全に解決された。等質開凸錐は自然に概均質ベクトル空間に拡張され、その基本相対不変式は概均質ベクトル空間の基本相対不変式となることが知られている。一般に概均質ベクトル空間の基本相対不変式の計算は難しいとされており、本研究においてあるクラスの概均質ベクトル空間の基本相対不変式を具体的に与えるプロセスを得たことは意義のあることだと思われる。 この研究の過程において等質開凸錐に付随する左対称代数の自己共役表現にε-表現と呼ばれるクラスを導入した。これは「自己共役表現に付随する対称二次形式が等質開凸錐の閉包のどの位置に位置しているか」という情報に関する分類であり、これを導入することによって先の問題を解決することが出来た。また基本相対不変式対応する1次元表現の指数を並べた行列(指数行列)を導入することにより、等質開凸錐の基本相対不変式が扱いやすいものとなった。今後の研究においてε-表現と指数行列は重要な役割を果たしていくだろうと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した等質開凸錐の基本相対不変式の明示的実現を達成し、さらにその副産物としてクランの右乗法作用素の基本相対不変式に関する指数も決定することが出来た。これが、本研究が順調に進展していると考える理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は「m-skeletonによるクランの表現の構成」と「等質ヘッセ領域の研究」となる。等質開凸錐はm-skeletonと呼ばれるグラフと対応しており、このグラフを用いて表現の構成を試みる。一般の階数を扱う準備として、まずは階数が3のときを考察する。ここで鍵となるのは、Grammianと呼ばれるタイプの行列の固有値である。また等質ヘッセ領域の研究は等質開凸錐の対合写像に関する分解を用いて行う。ここで2種類の表現とそれらを結ぶ線型写像の空間が現れる。この空間の構造を明らかとするため、まずは既知の等質ヘッセ領域を考察していく。
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