2013 Fiscal Year Annual Research Report
偏波干渉SAR解析による高精度地表変動解析及び災害分布特定手法の開発
Project/Area Number |
13J05029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石塚 師也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 地表変動 / PS干渉SAR解析 / 地盤沈下 / 偏波 / 地下水 |
Research Abstract |
申請者は、当該年度では、衛星観測データ(衛星搭載SARデータ)の解析により、高精度な地表変動現象の把握とより高精度に地表変動現象を明らかにすることができる解析手法の開発を行った。 まず、PS干渉SAR解析と呼ばれる時系列地表変動推定手法をタイの首都であるバンコクに適用し、当解析手法の精度を把握すると共に地表変動過程の考察を行った。バンコクでは、これまで、地下水の過度な汲み上げによる地盤沈下が深刻な問題となっていたが、近年は、政府の地下水使用規制により、地下水使用量の減少と地下水位の上昇が観測されていた。2007年11月-2010年12月間の衛星観測データに手法を適用した結果、年間1-2cm程度の地盤の隆起が約250km2の地域で観測された。本研究により、バンコクの地盤変動が隆起に転じたことが明らかになっただけでなく、地盤沈下後にこのような大規模な隆起が発生するということが、本研究により初めて示された。このように、高精度に面的な地表変動推定を行えることが利点であったが、都市部での地表変動推定精度は約1cmであり、都市部以外では精度良く地表変動を推定することが難しいことが分かった。 そのため、次に、多偏波で観測された衛星観測データの主偏波成分(HH/VV)を用いることで、地表変動推定精度の向上を試みた。人工構遁物のような1つの理想散乱体で表すことができる観測対象は、HHとWのような主偏波成分で観測した際に同程度の干渉度の低下が表れることが知られている。本研究では、通常はどちらかしか用いられない主偏波成分を同時に解析するアルゴリズムを提案し、青森県弘前市の地盤沈下地域に適用を行った。適用した結果、推定精度は最大2倍ほど向上することが分かった。また、地表変動精度の向上に伴い、地盤沈下地域をより明瞭に捉えることに成功した。 当該年度の研究により、まず、PS干渉SAR解析の利点と課題点が明らかになった。次に、多偏波観測データを用いることにより、地表変動の推定精度が向上し、より明瞭に変動現象を捉えることができることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、研究課題である「偏波干渉SAR解析による高精度地表変動解析手法の開発」を行い、研究目的の1つである「地表変動の推定精度が向上」することを示すことができた。また、研究成果は国際誌に掲載予定であり、当該年度における当初の研究計画を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の目的・特色は、4偏波で取得された衛星搭載SARデータを用いて、地球上の任意の地点における変動現象の解明に寄与する手法の開発である。当該年度の解析により2偏波を用いて取得されたデータにより地表変動の推定精度が向上することを示すことができた。そのため、今後の研究では、4偏波で取得されたデータを用いて解析する手法の開発を行う。4偏波を用いる場合、主偏波成分だけでなく交差成分も用いるため、解析対象によって干渉度の低下(ノイズ量を表す指標)の度合が大きく異なることが予想される。そのため、観測対象ごとに各偏波データの重みを客観的に決める手法が必要である。現在、最尤法により、データのノイズ量に応じて重みを決定する手法を開発中であり、今後、実際の衛星観測データへ適用を行っていく予定である。
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Research Products
(9 results)