2013 Fiscal Year Annual Research Report
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13J05098
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北本 享司 九州大学, 大学院理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光触媒 / 白金(II)錯体 / 水素発生 / メチルビオローゲン / 多電子貯蔵 / 分子触堪 / 水の可視光分解 / 光誘起電子移動 |
Research Abstract |
近年、太陽光を用いた水の可視光分解反応に大きな注目が集まっている。水の分解反応は、水の還元反応である水素生成反応と、水の酸化反応である酸素発生反応の2つの半反応に分けることができる。しかし、可視光を用いてこれらの反応を効率よく推進するためには触媒の存在が必要不可欠である。これに関連して、EDTA/Ru(bpy)_3^<2+>/メチルビオローゲン(MV^<2+>)/Pt(II)錯体から成る多成分系システムを用いた・光化学的な水素生成反応に関する研究が報告されている。また、これら各成分を単一分子に集約した分子デバイスの開発も行われている。これまでに研究代表者らは、Ru (bpy), 2+に対して複数のMV^<2+>を連結させた分子デバイスが光多電子貯蔵機能を示すことを見出している。本課題では、多電子貯蔵機能を基盤とした水の可視光分解システムの開発を目的としているが、今回、多電子貯蔵機能を有する光水素生成分子デバイスの開発を目的とし、Pt(II)錯体にビオローゲン集積体を導入した[PtCl_2(4,4'-MV2)]^<4+>、[P+Cl_2MCI, (4,4'-MV4)]^<8+>、及び[P+Cl_2, (5,5'-MV4)]^<8+>を合成し、その光触媒機能評価を行った。各ビオローゲン錯体(0・lmM)・及びEDTA(30mM)を0.1MNaClを含む酢酸緩衝溶液(0.1M, pH=5.0)に溶解させ、触媒溶液の調整を行った。この溶液に対し可視光照射を行ったところ、水素ガスの生成が確認された。興味深いことに、その触媒回転数(TON)は従来の単一分子光水素生成分子デバイス(TON=3-5)に比べて非常に高い(TON=14-27)ことが明らかとなった。また、光水素生成反応中における吸収スペクトル変化を測定したところ、可視域から近赤外域における吸収帯の増大が観測されたことから、多電子貯蔵機能を併せ持つことが示された。更に、触媒反応中におけるPtコロイド等の粒子形成の有無について動的散乱法を用いて検討した。その結果、光照射後も散乱強度の増大は確認されず、粒子形成は起こっていないことが明らかとなり、ビオローゲン集1積錯体の分子触媒性が確認された。そこで、これらの研究成果をまとめ、学術論文として投稿したところ、多電子貯蔵機能による触媒活性の向上に成功したとして、審査員からも高い評価を得て受理された(Angew. Chem, Int. Ed. 2014. 53. 4618.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題は、多電子貯蔵機能を応用した水からの光化学的な水素発生、及び酸素発生システムの開発を目的としており、初年度の目標は多電子貯蔵型光水素生成分子デバイスの開発であった。初年度の研究では、多電子貯蔵機能を有する白金(II)錯体の開発に成功し、従来のものと比べて高い触媒活性を示すことを明らかにした。また、これらの研究成果を学術論文として発表することができた為、当初の計画以上の進展があったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究では、多電子貯蔵型光水素生成分子デバイスを合成し、その光触媒機能評価を行った。その結果、比較的高い活性を示すことを明らかにした。しかし、水の可視光分解の達成するためには、水素生成側だけでなく、酸素発生側の研究も必要である。そのため、次年度は多電子貯蔵型光酸素発生分子システムの開発を推進したい。当初の研究計画に従い、多電子貯蔵ユニットと酸素発生触媒を共有結合で連結した分子デバイスの開発を行う予定である。
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Research Products
(10 results)