2014 Fiscal Year Annual Research Report
W.V.クワインにおける存在論の探究-議論領域における個体定項の消去-
Project/Area Number |
13J05119
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
野村 尚新 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | クワイン存在論の拡張 / 動的認識論理の証明論 / 分析哲学 / 認識論理 / マイノング主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,クワイン存在論を理論的領域から日常の領域に拡張した場合に生じる問題点を検討,解消し彼の存在論を深化させることである.1年度目では,マイノング主義を用いてクワイン存在論の方法論を踏襲しつつ彼の理論を日常の領域へ拡張した.1年度目の研究を踏まえて,2年度目の研究において,クワインの存在論を日常の領域へ拡張したところ以下の点が不十分であることが判明した. クワインの方法論は,ある人物が真とみなす理論を一階論理へ翻訳して,この翻訳された形式言語からその人物がコミットすべき存在対象を抽出するというものである.だが,一階論理の意味論では一度与えられた対象領域は不変であり,よってこれに依存する文の真偽も変化しない.しかし,我々が日常で真と見なす文は,情報の流入によって変化しており,それに応じて存在論的コミットメントも変化している.クワインの理論を日常の領域に拡張した場合,このような,情報による存在論的コミットメントは表現できないのである. この情報の流入による存在論的コミットメントの変化という観点から,認識の変化を形式的に表現する動的認識論理に着目した.そして,特に基本的な動的認識論理である公開告知論理におけるある既存の証明体系を検証したところこの体系に不備が見つかった.そこで,クワイン存在論のさらなる展開のために,この公開告知論理の既存の証明体系を指導教官である佐野勝彦と東条敏とともに再構築し2nd Taiwan Philosophical Logic Colloquium (TPLC)などで発表し,論文を提出,受理された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クワインの存在論を日常の領域へ拡張した場合に,当初の想定していたものとは異なる問題点が浮き彫りとなった.それに対処するために動的認識論理の研究に着手し,この分野の国際学会に論文を提出しが受理された.そして,この研究を通して形式体系への習熟が進んだ.本研究は形式的な手法に依拠する分析哲学における存在論なので,この研究は今後の研究によい効果をもたらすと思われる.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後,動的認識論理の研究を足がかりとして,志向性の論理に認識の動性を加え日常の領域へ拡張したクワイン存在論をより自然なものへと拡張する. これは当初の方法であった「論議領域における個体定項の消去」という方向性とは別のものになるが,研究の本来の目的であるクワイン存在論の再検討,及び,深化により貢献するものであると思われる.そして,平成27年度目においては,動的認識論理にエージェントの量化を加え平成25年度目に用いた志向性の論理に近づけた体系を構築することで,クワインの理論を日常の領域へ拡張する場合の新たな土台となりうる論理(エージェント量化を伴う動的認識論理)の構築に着手し,これらをまとめて論文を執筆する.
|
Research Products
(4 results)