2013 Fiscal Year Annual Research Report
量子揺らぎに関する原理的問題の検証を通した初期宇宙進化モデルの特定
Project/Area Number |
13J05221
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
御園生 洋祐 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 宇宙論 / 量子重力 |
Research Abstract |
本研究は、有力な初期宇宙進化モデルであるインフレーション理論に付随する未解決問題の検証を通して、高エネルギー領域での宇宙の姿と、その進化を支配するより基礎的な物理法則を解き明かすことを目的としている。 これまでに量子重力理論の候補と目されるHorava-Lifshitz (HL)重力理論に基づく宇宙初期特異点回避を議論し、非特異的な解を発見するなど一定の成果を得ている。但し、HL重力は時空に於ける時間と空間の等価性(Lorentz対称性)を喪失しており、特異点自体の定義や、その発生条件といった時空構造に関しての理解は進んでいない。このような事情により、解の特異性に関して更なる研究の余地が残されている。そこで、Ricci flow方程式を用いたEinstein方程式の数値解法の開発を進め、HL重力理論に於ける特異点の発生を始めとする時空の構造に関する知見を得るべく研究を推進している。この方法は、ゲージの選び方に依らず、Einstein方程式を解法のよく知られたPoisson方程式に帰着させることが出来る。そのため従来の数値解法と比較して、より複雑な解を得られやすい利点がある。本年度の進展としては、まずHL重力の低エネルギー有効理論であるEinstein-aether (ae)理論に於いて、あらかじめゲージ固定を行い簡略化した方程式を用いて定常・軸対称解が得られたことである。更に、より複雑な系へと適用するためゲージ固定に依らない定式化についても研究を進めている過程であり、一定の目処が付いている。 また、インフレーションを引き起こすスカラー場について、その量子補正が赤外領域での発散を含むなど、予測される観測データに影響し得る問題が存在する。現在、量子補正の正則化や場の相関関数の保存則の検証を通して、宇宙初期の量子状態に対しての制限を得るべく研究を遂行している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は体調不良により一時的に研究が滞った。研究は既に再開しており、その間に進めていた準備によって成果が生まれつつある段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
Ricci flow方程式を用いたae理論の数値解の構成については加えるべきゲージ固定項を既に特定しており、今後は境界条件の解析に移る。またae理論はHL重力理論の低エネルギー有効理論であるので、特異点付近の解析ではHL重力理論への拡張を考慮しなければならない。これに対しては、HL重力理論の作用を適当な形で書き換えることにより上記の方法を応用できる見通しを持っている。これにより、高エネルギー領域での時空構造の変更を精査し、引き続き解析を進めていく。
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Research Products
(1 results)