2014 Fiscal Year Annual Research Report
組換えワクシニアウイルスを用いた抗HTLV-1ワクチンの開発
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13J05302
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菅田 謙治 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | HTLV-1 / HBZ / ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
成人T細胞白血病(ATL)はHTLV-1のCD4陽性Tリンパ球ヘの感染に起因する腫瘍性疾患である。同様にHTLV-1は慢性炎症性疾患の原因ウイルスでもある。これまで様々な抗HTLV-1治療法の開発が行われてきたが、抗ウイルス免疫を賦活する免疫療法はHTLV-1関連疾患に対して有望な治療法になることが期待できる。本研究では新たなツールとして遺伝子組換えワクシニアウイルスを用いた抗HTLV-1ワクチンの作製と機能評価を行った。 点変異HBZ抗原(HBZ LL/AA:L27A/L28A)を発現する組換えワクシニアウイルス(rVV)は二又針を使い、皮膚接種を繰り返すことでHBZ特異的T細胞を実験動物(マウスやアカゲザル)に誘導出来ることを前年度までに報告している。本年度はよりin vivoでのHBZ発現組換えワクシニアウイルス(rVV-HBZ LL/AA)の評価を行う為にC57BL/6バックグウンドHBZトランスジェニックマウスに由来するT細胞リンパ腫細胞株を作製して、ワクチン効果の評価を行った。一方で、生体へのrVVによるワクチン効果を詳細に調べる為にSTLV-1感染ニホンザルをHTLV-1感染の霊長類モデルとして実験に使用した。STLV-1のウイルス抗原であるSTLV-1 Tax (sTax)とSTLV-1 bZIP factor (SBZ)を発現するワクシニアウイルスを接種し、生体内に感染したSTLV-1の体内動態を解析した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
rVV-HBZ LL/AAのワクチン効果の評価を行うためにHBZトランスジェニックマウス由来細胞株を作成した。以前の研究でHBZ発現トランスジェニックマウス由来のリンパ腫細胞株(Ht48)を作製した。安定した培養を可能とする為にin vitro cell lineの樹立を試みた。Ht48細胞はIL-2の存在下で4週間培養した所、自己増殖出来る細胞の集団が出現した。その後、IL-2存在下の培養したものをHt48(+)、非存在下のものをHt48(-)と名付けた。それらの細胞はreal-time PCRでHBZ発現を確認出来ている。両細胞ともに接種マウスで白血病の病態を形成することを確認することが出来ている。 次にその作製した細胞株を使用してrVV-HBZLL/AAによるワクチン効果をin vivoで評価した。前もってHt48(-)細胞を接種したC57BL/6マウスは3, 24, 48時間後にeffector細胞を接種した。Effector細胞はrVV-HBZ LL/AAを接種したマウスの脾細胞を全長オーバーラップHBZペプチドとIL-2の存在下で6時間刺激し、準備した。WT-VV接種マウスからのeffector細胞を接種した場合、全てのHt48(-)接種マウスが死亡した。一方でrVV-HBZ LL/AA effector細胞はHBZ-induced ATLによる生存率は約40%であった。それらの結果はrVV-HBZ LL/AAがHBZによるATLを防止出来る可能性を示唆している。 前年度に引き続き、rVV-sTax-M22/SBZ-LL/AAを接種後の経過観察を行った。STLV-1感染ニホンザルJM10でのrVV-sTax M22は接種後2週間以内に特異的CD4/CD8T細胞を検出することが出来た。その後の定期的なrVV-sTax M22の接種により30週後でもsTax特異的T細胞を検出出来た。一方、JM11でのrVV-SBZ LL/AA接種後2週間ではSBZ特異的T細を検出することが出来なかった。有意な特異的T細胞の検出には複数回接種(4-5回)が必要であった。その後、rVVの定期的接種を行った結果、SBZ特異的T細胞を30週に渡り、持続的に検出することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果ではニホンザルの実験では「生体内に存在するSTLV-1感染CD4T細胞がrVV接種によって減少する」という興味深い知見を得ることが出来た。それらの個体ではrVVの持続的な接種によってSTLV-1特異的T細胞を検出出来ており、今後も長期の観察を行う予定としている。 上記の予定に加えて、rVV接種後に生体内に残存するSTLV-1の状態を観察する為に次世代シークエンサーを用いたクローナリティ解析やSTLV-1 proviral load測定などを行い、rVV接種の前後でのSTLV-1の動態を解析する。また、近年の研究でモガムリズマブ(抗CCR4抗体)投与によって生体内のSTLV-1感染細胞が排除されると言う報告がなされている。CCR4はTh2マーカーとして知られている。また、CCR4は制御性T細胞(Treg)も発現しており、抗CCR4抗体はTreg細胞除去による宿主の免疫活性化による生じる可能性が存在する。それはrVV接種の際のワクチン効果を増大させる可能性を持つ。その為、rVVと抗CCR4抗体を併用し、ニホンザルに感染しているSTLV-1の動態を解析する。加えて、抗CCR4抗体投与後の生体内変化(慢性炎症の有無やTregの動態)なども同様に観察する。
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Research Products
(1 results)