2013 Fiscal Year Annual Research Report
非摂動くりこみ群による有限温度・密度QCDの相構造の解析
Project/Area Number |
13J05332
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山田 雅俊 金沢大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | くりこみ群 / 量子色力学 / カイラル対称性 / 有限温度 / 有限密度 / 強磁場 / 自発的対称性の破れ / 非摂動 |
Research Abstract |
量子色力学(QCD)はクォーク間に働く強い力を記述する。QCDは近似的にカイラル対称性を持つが、その相互作用によって自発的に対称性は破れ、クォークはヒッグス機構によって得る質量よりも大きな質量を獲得する。しかし, 有限温度、有限密度の環境下では対称性が回復すると期待されている。 本研究計画では、非摂動くりこみ群の方法を用いて、従来の解析での近似方法を系統的に改善し、それによって、ゲージ理論の解析で発生するゲージ固定パラメータ依存性を抑え、有限温度・密度系のQCDの相構造がどのように変化するかを調べることが目的である。 今年度は、QCDのカイラル有効模型である南部・ヨナラシニオ模型において、平均場近似を超える近似、すなわちnon-leading項の効果を取り入れた解析を行った。カイラル感受率である4体フェルミ結合定数のくりこみ群フローを調べた。その結果、non-1eading項は零温度・有限密度で特異点を持つことがわかった。この特異点の効果で低温・高密度領域では相構造が大きく異なることが分かった。しかし、この方法では1次相転移を評価することができない。そこで、クォーク・メソン模型を考え、補助場の有効ポテンシャルに対するくりこみ群方程式を偏微分方程式として数値的に評価した。その際、湯川結合定数や異常次元なども含めて解析を行い、それらのフローの性質を調べた。 重イオン衝突や中性子星内部では強磁場が発生していると考えられており、クォークの相転移に大きな影響を与えうる。これまで、外部磁場によってカイラル対称性の破れが起こりやすくなることが理論的模型の解析で知られおり、有限温度では、磁場が大きくなっていくとカイラル相転移温度は大きくなる(Magnetic catalysis)ことが示されてきた。しかし、2011年に格子シミュレーションによって、外部磁場の増大に対して相転移温度は小さくなる(Magnetic Inhibition)という結果が発表された。これを説明する様々な機構が提案された。その中で、福嶋氏と日高氏によって提案された機構をくりこみ群によって定量的に評価を行った。この機構によると中性パイオンを構成するクォークが磁場の影響を受け、その結果、中性パイオンの運動が制限されることが重要となる。解析の結果、中性パイオンの運動が磁場によって制限を受けることは確認されたが、Magnetic Inhibitionは確認されず、Magnetic catalysisが起こるという結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の目的は近似の改善に伴う相構造の変化を調べることである。ゲージ固定パラメータ依存性や相構造の変化を調べるためには物理量となるカイラル秩序変数の評価方法を確立する必要があり、その方法を模型で確立することができた。これを量子色力学へと拡張し、研究目的に向かうことができる。これらのことから研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として、まず、南部・ヨナラシニオ模型の相構造を補助場の方法で調べる。今年度の研究で明らかになった低温・高密度領域でのカイラル相境界を相転移の次数を含めて評価したい。特に、non-leading項の効果は相構造にどのような影響を与えうるのか調べ、その物理的な意味づけを与えたい。しかし、non-leading項が持つ特異点はカットオフ関数による人工的なものである可能性もある。従って、別のカットオフ関数を用いた場合で評価することも必要であると考えている。
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Research Products
(6 results)