2013 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的フラストレート磁性体における新奇な相転移と量子輸送現象
Project/Area Number |
13J05356
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
肥後 友也 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 幾何学的フラストレート磁性体 / Mott転移 / 圧力 |
Research Abstract |
平成25年度には、申請書年次計画に記載のように、疑二次元正三角格子を有するMott反強磁性体NiGa2S4の単結晶の育成と純良化・大型化を行ってきた。仕込み組成や、固相反応法での多結晶育成とヨウ素をエージェントとした化学輸送法での単結晶育成における焼成温度/時間等の条件を調節することによって、1㎠程度の薄板状の単結晶試料の育成に成功した。得られたNiGa2S4単結晶試料の帯磁率や誘電率測定`組成分析の結果、合成条件によっては磁性イオンNiの微量の欠損やSの含有量の違いが生じるという問題も見受けられた。合成条件によるS含有量の違いをうまく制御することが可能となれば、単結晶育成過程においてNiGa2S4単結晶のキャリア密度制御が可能となる為、特にこの点に注目をしつつ、今後も合成条件の最適化を行っていく。また、ジョンスホプキンス大やシンガポール国立大学等、複数の共同研究者へのNiGa2S4単結晶試料の提供を行っており、この系の多角的な実験による理解も進められている。 最近では、二次元系だけでなく三次元系フラストレート磁性半導体の探索や合成も行い、複数の系での純良な単結晶の育成にも成功している。三次元の系はNiGa2S4と比べ、よりMott転移近傍に位置しており、磁化や比熱測定に加えて電気伝導測定が可能となっている。また、圧力セルを用いた圧力印加による物性の制御にも成功しつつある。磁化や比熱、電気伝導度、ホール伝導度などの測定により、強いフラストレート効果が加わったMott絶縁体における金属絶縁体転移近傍での新奇な物理現象の実証的研究に推進している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、Mott転移近傍での強い幾何学的フラストレーションの効果を明らかにすることである。初年度の25年はキャリア密度制御を行うための対象となる幾何学的フラストレーションを有する擬二次元と三次元物質の選定と純良な単結晶の育成を行うとともに、圧力を印加することによる物性の変化等の確認を行うことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、上述の二次元系と三次元系のフラストレート磁性体に対して元素置換や電界効果トランジスタ作成、圧力セルによる圧力印加等のキャリア密度制御を行うとともに、帯磁率、比熱、電気抵抗測定を行い、強いフラストレーションが実現しているMott絶縁体での金属絶縁体転移近傍での基底状態の理解を深めていく。
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Research Products
(3 results)