2013 Fiscal Year Annual Research Report
胎仔期バルプロ酸曝露によるマウス自閉症様精神障害発現の分子基盤解析
Project/Area Number |
13J05359
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原 雄大 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | バルプロ酸 / 自閉症 / 動物モデル / ドパミン神経 |
Research Abstract |
妊娠中のバルブロ酸(VPA)の服用により、出生児の自閉症の発征リスクか増大するといり臨床治験に着目し、胎仔期VPA曝露による自閉症モデルマウスの作製を試み、胎生12.5日目にVPAを曝露したマウスが自閉症様精神障害を発現することを見出した。本研究では、胎仔期VPA曝露マウスの自閉症様精神障害発現に関わる分子機序の解明を目的としている。近年、臨床研究において自閉症の病態にドパミンDA)神経系の異常が関わっていることが示唆されているが、その詳細は不明である。一方、胎仔期VPA曝露マウスについてはDA神経系からの解析は全く行われていない。そこで当該年度は、胎仔期VPA曝露マウスにおいて脳内DA神経系の変化を行動薬理学的手法および生化学的手法を用いて解析した。 8週齢の胎仔期VPA曝露マウスに、DA神経系活性化薬物であるメタンフェタミン(METH)を投与したところ、対照群と比較して、METH投与による運動量の増加が有意に減弱することを見出した。また、脳内モノアミン量の解析により、METH投与により胎仔期VPA曝露マウス前頭前皮質でのDA遊離量の増加が有意に減弱していることを明らかにした。一方、他のモノアミン遊離に有意差は認められなかった。さらに、DA関連分子の発現量解析により、胎仔期VPA曝露マウスの前頭前皮質においてD1およびD2受容体が減少していること、DA遊離に関わることが報告されているdysbindinおよびcalbindinの発現量が減少していることが明らかになった。免疫組織化学的解析により、前頭前皮質においてMETH投与による神経の活性化が胎仔期VPA曝露により有意に減弱していることを見出した。なお、線条体ではいずれの変化も認められなかった。以上の成績は、胎仔期VPA曝露マウスの自閉症様精神障害の発現にDA神経系の変化が関与している可能性を示す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に実施した研究により、本モデルマウスの示す自閉症様精神障害の発現にドパミン神経系の異常が関与することを見出した。これらの知見は、自閉症を始めとする発達障害の病態解明に大きく貢献するものであると考えられるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、胎仔期VPA曝露マウスの自閉症様精神害に対する既存の向精神薬の作用を検討し、示す薬物の抽出を試みる。具体的には、昨年度見出したドパミン神経系の機能変化に着目し、リスペリドンをはじめとする抗精神病薬、ドパミン受容体アゴニスト、モノアミン神経系活性化薬でありADHD治療薬として用いられているアトモキセチンおよびメチルフェニデートの作用を検討する。なお、薬物の作用は、高架式十字迷路試験、社会性行動試験および新奇物体認識試験により、それぞれ不安様行動、社会性行動および学習記憶を指標として評価する。さらに、慢性投与により改善作用を示した薬物にっいては、神経化学的および組織化学的手法を用いて、神経伝達物質受容体の発現量、神経栄養因子の発現量、ならびに樹状突起スパイン密度の変化を解析し、薬効発現に関わる分子メカニズムを追究する。
|
Research Products
(3 results)