2013 Fiscal Year Annual Research Report
内部アルキンのビニリデン転位とその応用に関する研究
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13J05361
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
池田 洋輔 中央大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ビニリデン錯体 / ビニリデン転位 / 内部アルキン / ルテニウム / イリジウム / インデニル / C-C結合活性化 |
Research Abstract |
本年度は、内部アルキンのビニリデン転位反応の一般性の開拓という観点からこの反応において基本骨格として用いてきた[CpRuCl (dppe)](1)(Cp=C_5H_5- ; dppe=Ph_2PC_2H4PPh_2)のCp配位子や中心金属を変え、ビニリデン転位の開拓並びに反応性の変化について検討した。 1のCp配位子をインデニル基に変えた[(η^5-C_9H_7)RuCl(dppe)]と内部アルキンの反応を行った場合には、70℃ではインデニル-ルテニウム間へのアルキン挿入が進行し、シクロメタル化したη^6-インデニルルテニウム錯体が生成した。さらに、この錯体を130℃で加熱すると、ビニリデン錯体へ異性化することが分かった。この反応では、反応温度によって挿入/β-炭素脱離およびビニリデン転位という二種のC-C結合活性化反応を選択的に進行させることに成功しているが、このような反応は極めて珍しい。 また、中心金属をイリジウムに変えた[Cp^*IrCl_2(PPh_3)](2)と内部アルキンの反応からビニリデン錯体が生成することを見出した。この反応は9族金属であるイリジウム錯体上において内部アルキンのビニリデン転位反応が進行した初の例であり、この反応の一般性を開拓する上で極めて重要な発見と言える。また、イリジウム錯体上で生成したビニリデン錯体は非常に不安定であり、水のような弱い求核剤とも容易に反応することが分かった。この性質はルテニウムのビニリデン錯体とは大きく異なるものであり、今後の触媒反応の開発につながると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における目標の一つである『ビニリデン転位反応を8族金属以外の金属に展開する』という点に関して、既に9族金属のイリジウムに展開することに成功していること、また、この成功により得られたノウハウを活かしその他の金属に関しても展開が可能であると期待できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、内部アルキンのビニリデン転位反応を8,9族金属上で起こすことに成功している。これらの研究において得られた知見を活かし、7族(マンガン、レニウム), 6族(モリブデン、タングステン)の錯体に展開する。具体的には【CpM(dppe)L】(M=Mn, Re)や【(η^7-C_7H_7)MCl(dppe)](M=Mo, W)といった錯体をターゲットとし内部アルキンとの反応を検討する。また、イリジウム上で合成したビニリデンは極めて反応性が高いことがわかっている。この錯体と各種求核剤の反応を検討することで合成化学的な応用法へと展開する。
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Research Products
(6 results)