2013 Fiscal Year Annual Research Report
モデルマウスに基づいた難聴発症予防法および治療法開発基盤の確立
Project/Area Number |
13J05376
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
鈴木 沙理 東京農業大学, 生物産業学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遺伝学 / ゲノム / 難聴 / マウス / コンソミック系統 / 抗酸化物質 / カスパーゼ阻害剤 |
Research Abstract |
難聴モデルマウスを用いて新規難聴感受性遺伝子の同定による難聴予防法への情報提供、および抗難聴薬の評価による難聴治療基盤の確立を目的について研究を実施し、本年度は以下の成果を得た。 1. 難聴モデルマウスからの新規難聴感受性遺伝子の同定 早発性難聴系統のDBA/2J (D2J)および遅発性難聴系統のC57BL/6J (B6J)間の遺伝解析によって同定した第5番染色体の難聴感受性遺伝子の実体を明らかにする基盤となるバイオリソースを樹立するため、B6Jの遺伝的背景にD2Jの第5番染色体を導入したコンソミック系統の作製を試みた。その結果、これまでN_g世代のB6J-Chr5^<B6J/D2J>ヘテロソミックマウスを計10個体作製することができた。現在、N_<10>世代のヘテロソミックマウスの作製およびホモ化したB6J-Chr5^<D2J>コンソミック系統の樹立を目指している。 また、D2J, B6Jと難聴抵抗性系統のMSM/Ms (MSM)を用いた遺伝解析によって同定した第12番染色体の難聴感受性遺伝子を同定するため、B6Jの遺伝的背景にMSMの第12番染色体のセントロメア側(6.0-86.5Mb)およびテロメア側(55.3-113.9)のゲノム領域を導入したB6J-Chr12C^<MSM>および-Chr12T^<MSM>コンソミックマウス系統の聴力測定をABR (Auditory Brainstem Response)閾値を調査した結果、B6J-Chr12T^<MSM>マウスはB6J系統と類似した聴力閾値を示したが、B6J-Chr12C^<MSM>マウスは16kHz以上の高周波領域の音域に対して抵抗性を示し、特に32kHzにおいては、2~10ヶ月齢で有意な聴力差が認められ、難聴が遅延し、感受性遺伝子が存在する候補領域が第12番染色体の6.0-55.3Mbの範囲に限定された。 2. 難聴モデルマウスへの薬剤投与による聴力回復効果の検証 B6JおよびD2J系統の難聴発症に有効な抗難聴薬をスクリーニングするため、本年度は最適な効果が得られる投与条件の構築を目指し、抗難聴効果が報告されている抗酸化物質コエンザイムQ10およびアルファリボ酸、また、カスパーゼ阻害剤であるZ-VAD-FMKの難聴発症への効果を調査した。B6Jでは、非投与群とコエンザイムQ10およびアルファリポ酸投与群間において統計学的に有意差は示されなかったが、投与群は非投与群よりも僅かではあるが、聴力が回復する傾向にあった。一方、D2J系統においては全てのマウス個体の聴力が低下し、難聴の回復傾向がみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第5番染色体のコンソミック系統の樹立においては、継続的な戻し交配により、来年度には遺伝解析に使用できる段階まで進んでいる。また、第12番染色体のコンソミック系統における聴力の解析も進んでおり、第12番染色体コンソミック系統の新たな情報蓄積となった。一方で、抗難聴薬を用いた難聴モデルマウスの解析においては、難聴発症への効果は見られなかったが、新たなに抗難聴薬の最適な投与条件を構築するための参考となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作製した第5番染色体のコンソミック系統を樹立するとともに、ヘテロソミックマウス間で交配実験を行い、サブコンソミックマウスを作製し、遺伝子型判定および聴力測定を行い、第5番染色体上の難聴感受性遺伝子の絞り込みを行う。第12番染色体のコンソミック系統においてもサブコンソミックマウスを作製し、難聴感受性遺伝子座の絞りこみ、および遺伝子発現解析によって責任遺伝子の同定を目指す。また、抗難聴薬を用いた難聴モデルマウスの解析において、今回用いた抗難聴薬は、特に生後1ヶ月齢において聴力低下を示すD2J系統において効果が得られなかったため、今後はD2J系統の早発性難聴に効果を示すことが予想される薬剤を選択する。さらに、当該年度は薬剤投与によるマウスのストレス軽減を考慮し、7日に1回の投与を試みたが、今後は投与間隔の短縮、およびよりストレスを軽減した投与方法についても検討を行う。
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Research Products
(1 results)