2014 Fiscal Year Annual Research Report
胎仔期母体擬似ウイルス感染による精神異常行動発現に関わる分子基盤の解明
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13J05377
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 優子 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 精神疾患 / 環境要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画では、「胎仔期母体擬似ウイルス感染モデル動物」を用いて統合失調症発症様精神異常行動発現に関わる分子基盤を追究する予定であった。しかしながら、私が計画したICR系マウスでのモデル動物化が困難であることが認められないことが判明したため、研究期間内にモデル動物を確立し成果をあげることは極めて厳しいと判断し、別のアプローチにより精神異常行動発現に関わる分子基盤を追究することにした。具体的には、前年度に引き続き、PACAP欠損(PACAP-KO)マウスの学習記憶障害改善作用に関する研究を実施した。 臨床において精神疾患発症とPACAP機能低下との関連が示されており、基礎研究においてもPACAP-KOマウスが多動や跳躍行動、学習記憶障害などの精神疾患様の異常行動が認められ、異常行動が抗精神病薬で抑制されることが報告されている。一方、私の所属研究室では、玩具や運動器具を設置し日常の刺激を強化した「豊かな環境」でPACAP-KOマウスを幼若期から4週間発育させると、異常行動の抑制が認められることを明らかにしてきた。 PACAP-KOマウスおよび野生型マウスを、4種類の飼育環境[(1)通常環境群, (2)豊かな環境群, (3)輪回し車設置群, (4)輪回し車を含まない豊かな環境群]に分け、4週間の各環境下での飼育後、PACAP-KOマウスの学習記憶障害は、豊かな環境および輪回し車を含まない豊かな環境での飼育により改善されたが、輪回し車のみの環境飼育では改善されなかった。同様の環境飼育による改善効果は、PACAP-KOマウスの海馬CA1領域での樹状突起スパイン密度の減少に対しても認められた。以上の成績より、豊かな環境飼育によるPACAP-KOマウスの学習記憶障害改善作用において、運動器具を用いた自発的運動による効果の寄与が小さいこと、海馬樹状突起スパイン密度変化の関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究テーマを少し修正しているが、環境要因の作用に関してインパクトのある発見をしている。すなわち、環境要因の中では「輪回し運動」と言う自発運動が重要であることが報告されているが、本研究では、PACAP-KOマウスの異常行動が自発運動以外の複雑な環境要因の発育期負荷により抑制されることを見出している。本成績は、環境要因の作用の分子基盤を追究する一つの手がかりになる発見である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度からの継続として、モデルマウスの作製を試み、胎仔期母体擬似ウイルス感染による脳内でのマイクロRNA(miRNA)の発現変動について、網羅的解析を行う。これに加え、エピジェネティック変化(DNAメチル化)についても解析を行う。また、miRNA発現変化あるいはエピジェネティック変化にともない発現変動する分を同定し、これら分子が脳の器官発達に及ぼす影響を明らかとする。さらに、胎仔期母体擬似ウイルス感染により発現変化する分子が、神経細胞ならびにグリア細胞の増殖や分化・成熟に与える影響を解析する。これら細胞の増殖や分化・成熟に変化を認めた場合、各神経系(グルタミン酸神経、ドパミン神経等)のマーカー蛋白の発現変化を解析し、影響を受ける神経系を同定する。 上記の研究と並行し、「豊かな環境飼育によるPACAP遺伝子欠損マウスの学習記憶障害改善作用の自発的運動非依存性」という研究を遂行する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Chronic treatment with valproic acid or sodium butyrate attenuates novel object recognition deficits and hippocampal dendritic spine loss in a mouse model of autism.2014
Author(s)
Kazuhiro Takuma, Yuta Hara, Shunsuke Kataoka, Takuya Kawanai, Yuko Maeda, Ryo Watanabe, Erika Takano, Atsuko Hayata-Takano, Hitoshi Hashimoto, Yukio Ago, Toshio Matsuda
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Journal Title
Pharmacology Biochemistry & Behavior
Volume: 126
Pages: 43-49
DOI
Peer Reviewed
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