2013 Fiscal Year Annual Research Report
音声コミュニケーションの放散進化:カラス科2種をモデルとした比較研究
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13J05437
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
近藤 紀子 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | カラス科 / 音声コミュニケーション / 社会性 |
Research Abstract |
(1)ハシブトガラスの社会的順位が発声頻度にどのように影響しているかを調べるため, 飼育下の群れの観察を継続的におこなった. 観察した群れは, 雌雄各5個体からなっており, 明瞭な線形の順位関係が存在した. 発声頻度については, コンタクトコールと連続コールで傾向が異なっていた. コンタクトコールは群れのすべての個体が発したのに対し, 連続コールは高順位個体しか鳴いていなかった. これは, カラスの群れにおいて, 連続コールが社会的順位を他個体にアピールする機能を持つことを示唆する. (2)ハシブトガラスのコンタクトコール(kaコール)に性差が存在するかを調べたオス13個体, メス11個体よりコンタクトコールを録音し, 音響解析をおこなった. その結果, コンタクトコールの音響構造は統計的に雌雄で異なることが示された. つづいて, カラスが音響特徴の雌雄差を区別できるかを調べるため, 馴化―脱馴化法を用いて弁別の有無を調べた. 飼育下の7個体を用いて実験をおこなったが, 彼らがコンタクトコールの雌雄差を区別しているという結果は得られなかった. 馴化―脱馴化法を用いた実験は, 個体数が少ないため, 今後音声のサンプル数を増やすとともに再度おこなう必要がある. (3)黒島, 西表島に生息するオサハシブトガラスについて, 生息環境に適した音声を発しているかを調べた. 9月と2月の2回野外調査を行った. その結果, 島のほとんどが牧草地となっている黒島のオサハシブトガラスは, 原生林を維持している西表島のオサハシブトガラスよりも, 変調の多い音声を発していることが明らかになった. これは, 牧草地という開けた環境に適した音声であると考えられ, ヒトによる環境の変化がカラスの音声に影響を与えてきた可能性を示唆する. 今後は, それぞれの島でプレイバック実験をおこない, 伝播距離等を調べる必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニューカレドニアでの調査が実行できなかったため、計画通りの研究遂行とはならなかったが、八重山での調査を行うことができたので、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ニューカレドニアカラスについての研究については引き続き調整が必要だか、もし遂行か不可能であつた場合にも、八重山諸島でのオサハシブトガラスを対象とした研究をおこなう。これによって、社会性鳥類としてのカラスの音声コミュニケーションの理解に貢献できると考えている。
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Research Products
(4 results)