2013 Fiscal Year Annual Research Report
「復帰」をめぐる沖縄の抵抗言説を読みなおす:思想、文学、アクティヴィズムを事例に
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13J05459
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
松田 潤 一橋大学, 大学院言語社会研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 反復帰・反国家論 / 新川明 / 国場幸太郎 / 中屋幸吉 / 琉大マルクス主義研究会 / 琉球大学学生新聞部 / インターナショナリズム / 復帰運動 |
Research Abstract |
平成25年度は、反復帰論を牽引していた新川明に影響を与えた国場幸太郎についての調査を進めた。国場が人民党追放(1960年)後に新里恵二と『日本読書新聞』で行った論争及び『経済評論』『思想』に掲載された二本の論考で行った現状分析と未来への展望を簡潔にまとめると、今後の大衆運動の発展は「島ぐるみ闘争」で頂点に達した日本国民との結合を求める「民族主義」的な祖国復帰運動を乗り越え、労働者・農民の階級的連帯に基礎をおくインターナショナリズムに依拠した復帰運動を展開することで、相互補完的な軍事主義・資本主義体制を深めていく日米帝国主義を打破していくべきとする主張である。国場は政治的には統一戦線派であったが、闘争の主体を民衆に仮託しながらもナショナルな「統一」からは徹底して距離を置き、常にグローバル・ヒストリーの中で沖縄の解放を目指した革命家であった。この点は、沖縄の現代史を世界史との連関において考察する視野を切り開いており、反復帰論の思想史的意義を位置づける上で非常に重要である。 また、中屋幸吉の遺稿集『名前よ立って歩け』を読み進める中で、琉球大学マルクス主義研究会(マル研、1961年1月結成)とその活動の基盤となっていた琉球大学学生新聞部の活動についても、沖縄における資料調査から多くが明らかになった。彼らの運動と思想は共産主義者同盟の影響だけでなく、学生運動の世界的な盛り上がり(新左翼ムーブメント)のなかで位置付けることが可能である。彼らがインターナショナリズムに基づき復帰「運動」批判(「復帰」批判ではないものの)を行ったことは、復帰運動の民族主義的な傾向とその陥穽を批判している点で意義があり、また反復帰論研究の裾野を拡げる上でも重要な視座を提供していると言える。これらの研究成果に中屋の詩の分析を加え、カルチュラル・タイフーン2013において報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は国場幸太郎、中屋幸吉らの著作や身を投じていた運動を調査するなかで「復帰への抵抗」がいかに行われていたかを明らかにすることができた上に、その世界性についても養容を深めたことで、帝国主義/植民地主義瓦解のプロジェクトを飛躍的に前進させることができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は国場の思想が反復帰論へいかに受容されていったのかを明らかにし、世界史的な文脈で反復帰論の位置づけを行うことが課題となる。また、中屋らの運動と思想の広がりと限界ベトナムに平和を! 市民連合(ベ平連)やプラックパンサー党といった反戦兵士たちとの国境を越えた連帯活動の持つ世界的な同時性とその意義にっいて研究を進めていくことも必要である。さらに研究計画で予定しているように映像作品についても分析を開始する。
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Research Products
(3 results)