2013 Fiscal Year Annual Research Report
心房形態形成機序および発生段階における心筋代謝様式の解明
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13J05481
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
志村 大輔 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 心房筋特異的遺伝子欠損 / 代謝産物網羅測定 / Sarcolipin / 張力・Ca^<2+>濃度測定 / 乳酸 |
Research Abstract |
本研究では、心房筋特的遺伝子欠損マウスを作製するために、心房筋に特異的な発現をするSarcolipin (SLN)の遺伝子座にCre組換え酵素(以下Cre)を導入したCreknock-in (KI)マウスを用いている。本年度は、心房本来の代謝様式の解明の他、Creの導入によるSLN欠損の影響の検討を中心的に行った。同時に、Cre KIマウスとGata4(欠損の標的遺伝子)のfloxマウスとを掛け合わせた心房筋特的遺伝子欠損マウスの作製も行っている。代謝産物の網羅測定等を行った研究では、成熟マウスにおける心房と心室の代謝様式の一端を解明した。この成果はAmerican Journal of Physiologyに筆頭著者として論文発表した。本論文では、心房と心室における乳酸の取込み量の違いや心室での活発なエネルギー産生、さらには、代謝経路で重要なpynrvate dehydrogenase kinaseの4つのアイソフォームの発現パターンが心房と心室で異なることを発表した。これにより、まとめて1つの組織としてみられがちであった心房と心室の特徴を捉えることに成功した。また、SLNは筋小胞体膜タンパク質で、細胞内Ca^<2+>濃度の調節に関与し、その欠損は心機能に影響するという報告がある(Babu et al., Proc. Natl. Acad Sci, 2007)。従って、SLN欠損の影響の検討において、生理学的機能の測定は不可欠であると考えられる。そこで、独自の新たな実験系を用いてSLN欠損の生理学的影響を検討した。その実験系は、トランスデューサーとエクオリン(Ca^<2+>結合発光分子)により、張力と細胞内Ca^<2+>濃度の同時測定を行うもので、野生型、SLNヘテロ及びホモ欠損体の三群間で比較した。この実験結果と、既に得た分子生物学的実験の結果から、SLNヘテロ欠損は野生型と比べ、有意な影響を及ぼさないことを見出した。これらをまとめた論文を、現在執筆中である。この張力・Ca^<2+>濃度測定の実験系は、あらゆる薬理学実験に適応できるため、新たな研究対象の考案も行った。上の研究成果から、心機能と密接な関係があると考えられた代謝物の一つ"乳酸"に着目し、その生理学的機能について研究を展開した。心臓での乳酸の利用は出生の前後で大きく変化することが知られており(Lopaschuk and Jaswal, J Cardiovasc Pharmacol, 2010)、本研究から、発生と代謝の関係性の解明が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
心房と心室、それぞれの代謝様式の特徴を明らかに、筆頭著者として論文発表できた。また、張力と細胞内Ca^<2+>濃度の同時測定という新たな実験系を確立し、SLN欠損の影響をより詳細に捉えることに成功した。これにより次の研究対象の展開もできるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究計画に乗っ取り実験を進めて行くが、Gata4の心房筋特異的欠損マウスの研究成果を発表するためにも、まずはSLN欠損の影響を検討した成果を早急に論文発表する。 また、SLN欠損マウスやGata4欠損マウスだけでなく野生型マウスにおいても、新たな研究対象となる乳酸の影響も確認する。 問題点としては、実験動物管理施設のマウス飼育スペースに限りがあり、マウスの交配と誕生が不十分であるため、飼育計画を見直し期間内に十分量のマウスを作製できるようにする。
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Research Products
(4 results)