2014 Fiscal Year Annual Research Report
心房形態形成機序および発生段階における心筋代謝様式の解明
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13J05481
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
志村 大輔 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心房筋特異的遺伝子欠損 / Sarcolipin / 乳酸 / 張力・カルシウム同時測定 / Gata4 / Shh |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、心房筋に特異的な発現をするSarcolipin (SLN)の遺伝子座にCre組換え酵素を導入したSLN-Cre knock-in (KI)マウスを用いている。本年度は、乳酸が心筋に与える影響及び、Creの導入によるSLN欠損の影響を、生理学的手法と形態学的解析を中心に検討した。またSLN-Cre KIマウスとGata4(欠損の標的遺伝子)のfloxマウスとを掛け合わせた心房筋特的Gata4欠損マウスとShh欠損マウスの作製も行い、順調に誕生して来ている。 前年度発表した論文を基に、心機能と密接な関係があると考えられた代謝物の一つ”乳酸”に着目し、その生理学的機能について検討した研究では、乳酸添加により、張力と細胞内Ca2+濃度が減少し、尚かつその乳酸濃度依存性が心房と心室で異なっていることを見出した。 また、SLN欠損の影響に関しては、まず、先行研究で報告されている線維化について野生型、SLNヘテロ及びホモ欠損体の三群間で比較した。シリウスレッド及びEVG染色により各群の線維化レベルを解析したところ、先行研究と同様にホモ欠損体において線維化が見られたが、ヘテロ欠損体は野生型と比べ有意な差はなかった。また、乳酸添加実験と同様に張力と細胞内Ca2+濃度の同時測定を上記の3群間で比較したところ、いずれも有意な差はなくSLN欠損による影響は見られなかった。この実験結果と、既に得た結果をまとめ、SLNへテロ欠損は通常の心機能を維持できることを見出した。これらをまとめた論文を、筆頭著者として執筆し、投稿目前まで来ている。 本年度は、SLN欠損の影響の検討に加え、SLN-Cre KIマウスを用いて新規心房筋特異的Gata4欠損マウスとShh欠損マウスを誕生させた。これは世界初の遺伝子欠損マウスで、心房の発生においてGata4及びShhが持つ役割の一端が解明できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
張力と細胞内Ca2+濃度の同時測定という新たな実験系を確立し、心筋に対する乳酸の役割及びSLN欠損の影響を生理学的観点から解析することに成功した。SLN欠損の影響に関しては、形態学的解析の結果も加え、論文投稿目前にまで迫っている。
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Strategy for Future Research Activity |
SLN欠損の影響をまとめた論文の受理を目指すと同時に、新たに誕生したGata4欠損マウスとShh欠損マウスの解析を行ってゆく。両転写因子は心発生に重要とされているため、まずは、胎生致死と生存率の確認をし、形態学的解析から始める。順次、分子生物学的手法によるストレスマーカーの発現量解析へと進む。 乳酸に関しては異性体や阻害剤を用いた影響も解析し、詳細な機能を調べてゆく。 問題点としては、実験動物管理施設のマウス飼育スペースに限りがあり、期間内に十分量のマウスを作製できるように計画し、交配を進める
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Research Products
(2 results)