2013 Fiscal Year Annual Research Report
酸化膜を有するSiナノ構造中のフォノンおよびキャリアの挙動に関する計算科学的研究
Project/Area Number |
13J05632
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
図師 知文 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | フォノン / キャリア / 分子動力学法 / 非平衡グリーン関数法 / 酸化絶縁膜 / SiO_2/Si界面 |
Research Abstract |
本研究は、酸化膜に覆われたSiナノ構造中のフォノンとキャリアの振る舞いを理解するために、それらの輸送特性を評価することを目的とする。本年度では、①酸化膜に覆われたナノワイヤ型Si結晶のフォノン・エネルギー分散関係の解析と、②ナノチューブ型Si結晶の熱電性能指数の予測、の2つの研究に取り組んだ。 ①フォノンの基本的な指標となるフォノン分散関係は、分子動力学法を用いて解析した。酸化膜に覆われたナノワイヤ型Si結晶では、SiO_2/Si界面の存在、および酸化誘起歪の影響によってSi原子の振動エネルギーが変化し、バルク結晶とは異なる分散関係を示すことを突き止め、ナノワイヤ型Si結晶中のフォノン伝播特性の理解にはその結晶中の3次元歪分布を正確に把握する必要があるとう工学応用上重要な知見を示した。この成果は学会でも高く評価され、最新の成果を持ち寄る国内研究会で最優秀ポスター賞を受賞した。また、筆頭著者として執筆した論文が英文学術雑誌で公開された。本研究で初年度の目標としていたSiナノ構造体特有のフォノン分散関係と状態密度の計算はほぼ達成した。 ②本年度はさらに次年度に研究予定であったキャリア輸送の評価も行った。非平衡グリーン関数法に基づく量子輸送シミュレーションを実施し、ナノチューブ型Si結晶中のゼーベック係数Sと電気伝導度Gを算出した。SとGは表面ラフネスと結晶サイズに依存し、その結果、熱電素子としての性能を大きく左右することを明らかにした。Siナノ構造の表面ラフネスがフォノン及びとキャリアの輸送パラメータに与える影響を解明し熱電性能指数ZTの予測までこぎつけた本成果は、既に国内学会で発表し、計算機実験のみで熱電性能を予測するという新奇性を評価された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度から研究課題に取り組み、目標としていたSiナノ構造体特有のフォノン分散関係と状態密度の計算はほぼ達成した。期待以上の進展があったと認められる成果として、非平衡グリーン関数法に基づく量子輸送シミュレーションを実施し、電気伝導に与える影響まで踏み込んだ事があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度に引き続きSiナノ構造中のフォノンとキャリアの輸送特性を評価する。界面ラフネスを有するSiナノ結晶中の熱伝導率と電気伝導度を分子動力学シミュレーションと量子輸送シミュレーションでそれぞれ予測し、それらをパラメータとしたデバイスモデリング・シミュレーションを実施する。それにより低次元Si結晶を材料とする熱電素子やトランジスタの特性の性能を高精度に予測する予定である。
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Research Products
(4 results)