2013 Fiscal Year Annual Research Report
リプログラミング過程における遺伝子発現変化を担う転写因子の同定と解析
Project/Area Number |
13J05639
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古賀 牧土 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リプログラミング / Foxd1 / Foxo1 |
Research Abstract |
本研究では、まずマイクロアレイ解析を行い、MEF(マウス胚性線維芽細胞)からiPS細胞へのリプログラミングにおける遺伝子発現変化を網羅的に調べた。マイクロアレイ解析の結果よりリプログラミング過程で発現が上昇する遺伝子に注目し、リプログラミング過程で起こる遺伝子発現変化を引き起こす転写因子の予測を行った。それら候補転写因子についてshRNAによる発現抑制を行った結果、Foxd1の発現抑制によりリプログラミング効率が減少したことから、Foxd1がリプログラミングに寄与している転写因子であることがわかった。また、Foxd1の発現量の減少に応じてDax1などのFoxd1下流遺伝子の発現量が減少しており、Dax1の発現抑制ではリプログラミング効率が減少していた。すなわち、Foxd1がリプログラミング過程においてDax1らの下流遺伝子の発現を制御することによりリプログラミングに寄与しているという可能性が示唆された。さらに、Foxd1レポーター細胞を用いた解析から、Foxd1の発現上昇は一部の限定された細胞集団において起こっているということがわかった。次に、セルソーターを用いてFoxd1発現細胞とFoxd1未発現細胞を分取し性質を比較した結果、Foxd1はリプログラミングが進行した細胞において発現が上昇しているということがわかった。興味深いことに、Foxd1はMEFやiPS細胞では発現しておらず、リプログラミング過程では一過的な発現上昇を示していた。さらに、Cre-loxPシステムを用いたFoxd1発現細胞の運命追跡実験を行った結果、iPS細胞の95%以上がリプログラミング過程でFoxdlを発現していることがわかった。以上、新規リプログラミング制御因子であるFoxd1は、リプログラミングが進んだ細胞において発現が上昇する時期特異的なマーカー遺伝子であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、細胞運命追跡実験によりリプログラミングされる細胞の多くにおいてFoxd1の発現上昇が起こっていること、またテラトーマ作製・キメラマウス作製などの実験より、ワイルドタイプiPS細胞とFoxd1ノックアウトiPS細胞の品質の確認を行い、いずれのiPS細胞も樹立されていることを示すことができた。これらの実験は本研究において非常に重要な実験であり、当初予定されていた通りの実験である。またNature Communications誌に"Foxd1 is a mediator and indicator of the cell reprogramming process"として当研究を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出した新規リプログラミング制御因子であるFoxd1の発現の有無により、後にできるiPS細胞の性質が異なるかという点については、これまでの研究で明らかにできていない。この点についてさらなる解析が期待される。
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Research Products
(3 results)