2013 Fiscal Year Annual Research Report
実場面における手話通訳発話の構成メカニズムの研究-通訳実践データベースの構築-
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13J05740
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
菊地 浩平 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 手話 / 相互行為 / 通訳 / 記述手法 |
Research Abstract |
平成25年度は主としてデータの整備をすすめ, 研究協力者とのミーティングや国内外の研究者とのディスカッションをする機会をもった. 年度ごとの計画ではデータ収集もあわせて進める予定であったが, すでに手元にあるデータの整備進展にともない専門用語・学術ミーティング通訳の事例を100程度まで集めることができ, 平成25年度はデータをこれ以上収集しなくとも十分な量が集められると判断したためである. 収集した事例にっいては国内外で学会発表を行った. 内容については次の通りである. (1)本研究課題を進めるにあたって必要となるデータのアノテーションおよび文字化という2つの方法論的側面について報告した. 特にこれまでにも研究室メンバーとの共同研究として進めてきた手話発話の記述手法が, 具体的な場面で使用される実際の発話を記述する際に効果的であることを示すことができた. これらの記述手法はきわめて微視的なものであり, 従来の手法では捉えられなかった産出の軌跡を議論の対象にすることができるものである. この手法によって手話発話構成の中に見られる非流暢さや産出のよどみを見落とさずに記述することができ, そこから手話発話構成一般において利用されている手続きについて分析をすることが可能となった. (2)この記述手法を用いて手話発話・手話通訳発話の構成を分析し, 手話発話構成に見られる手指の保持が, 語の言い直しや言い換えに利用されていることを示した. また手話通訳者が通訳を行う際に, 単に命題を翻訳しているだけでなく「誰が誰に向けて話しているのか」という部分も含めて通訳活動を行っていることを微視的な手法によって示した. これらの成果報告によって, 海外の研究者(手話研究だけでなくジェスチャ, 会話分析などの隣接領域の専門家も含む)とディスカッションする機会をもった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画では専門用語の表現形式を収集・分類することが課題だったが, この課題が達成できただけでなく, 表現形式が用いられる状況を含めた理解を目指すという次の段階の研究の重要性を「相互行為としての手話通訳活動」というテーマとして位置付けることができた. またその研究にいち早くとりかかることができたため, 研究課題は当初の計画以上に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はデータの整備と分析を進める段階として位置づけているが, 研究計画に記載した内容を「相互行為としての手話通訳」という観点からさらに進めていく。成果報告ついてはさらに積極的に機会をもつことを検討しており, すでに海外での研究カンファレンスに投稿して現在は採否結果を待っている段階である. 研究論文執筆については, 本課題にフィットする特集が認知科学会の学会誌で組まれる予定であるため, 投稿の準備を進めている. またこれまでどおり協力者とのミーティングの機会をつくる他, より多くの通訳者と議論する機会をっくり, 実際に活動している実践者に研究成果を発信するなど, アウトリーチ活動も予定している.
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Research Products
(4 results)