2013 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウスを用いた成熟肝細胞への新規in vitro分化誘導系の構築
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13J05787
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳田 絢加 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 肝発生 |
Research Abstract |
肝発生過程における肝幹・前駆細胞の分化制御因子の探索、分化制御機構の解明を目的として研究を行った。これまで肝発生過程において細胞周期関連遺伝子のうち、細胞周期抑制遺伝子p57が胎仔肝幹・前駆細胞で特異的に高く発現し、成熟肝細胞では著しく発現が低下すること、胎仔肝臓ではp57は肝幹・前駆細胞と間葉系細胞で発現すること、p57欠損マウスでは胎生後期の肝臓において肝成熟遅滞がみられることを明らかにしてきた。 肝・幹前細胞の増殖、分化は肝・幹前細胞自身の内的因子と、環境から受ける外的因子の両方によって制御されることが知られている。p57欠損マウスでみられた肝成熟遅滞が、肝・幹前細胞自身の内的因子と外的因子のどちらによるものか明らかにする為、以下の実験を行った。1) p57欠損と野生型マウスのキメラ個体を作製し、同一体内環境におけるp57欠損肝・幹前駆細胞と野生型細胞の分化能力の比較。2) p57欠損型と野生型肝幹・前駆細胞の遺伝子発現の比較。3) p57欠損型と野生型肝幹・前駆細胞のin vivoにおける増殖能の比較。 その結果、p57欠損マウスは出生直後に死亡するが、p57欠損と野生型マウスのキメラ個体は成体まで生存し、p57欠損型肝幹・前駆細胞はキメラ肝臓内では野生型肝細胞と同等の成熟肝細胞に分化すること、p57欠損型と野生型肝幹・前駆細胞では分化を制御する転写因子群の発現に大きな差が見られないこと、p57欠損肝幹・前駆細胞は野生型の肝幹・前駆細胞にくらべやや細胞増殖が亢進していることを明らかにした。以上の結果より、p57欠損マウスでみられた肝成熟遅滞は肝幹・前駆細胞自身の内的因子ではなく、外的因子である間葉系細胞が原因である可能性が示唆された。今後、p57欠損型と野生型間葉系細胞における遺伝子発現を比較し肝分化制御因子の解明を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝分化制御因子特定の為、p57欠損マウスでみられる肝成熟遅滞の原因が、肝・幹前駆細胞自身の内的因子か、環境による外的因子よるものか検討した。その結果、p57欠損による外的因子が肝分化を制御している可能性を示唆する結果を得た。現在p57欠損型と野生型における間葉系細胞の遺伝子発現を比較しており、分化制御因子特定に向けて、おおむね当初の計画通り順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後p57欠損型と野生型の間葉系細胞間で発現量の異なる遺伝子に注目する。肝・幹前駆細胞のin vitro成熟分化誘導系を用い、候補遺伝子の強制発現やノックダウン、シグナル阻害剤の添加を行い肝分化制御因子の特定を目指す。肝幹・前駆細胞から肝細胞への分化マーカーをスクリーニングするため、初期からの肝芽細胞をマーキングできるFoxa3-GFP iPS細胞を用い、テトラプロイド補完法によりFoxa 3-GFP胎仔の作製を試みた。しかし、胎生中期まで正常発生する個体を得られずスクリーニングが困難であった。今後、胎生後期まで発生が可能な良質なiPS細胞株の作製やCRISPRなどゲノム編集技術を用いFoxa3・GFP個体の作製を試み、分化マーカーのスクリーニングに用いたい。
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Research Products
(7 results)