2014 Fiscal Year Annual Research Report
視覚性自己運動感覚の神経基盤-複数感覚領野間結合の解明
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13J05795
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上﨑 麻衣子 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自己運動感覚 / オプティックフロー / fMRI / DWI / 運動視知覚 / 多感覚統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
オプティックフローとは私たちが空間内を移動することによって網膜上に生じる運動パターンのことを指す(Gibson, 1954)。 先行するfMRI研究の結果からオプティックフロー刺激により視覚野、感覚連合野、前庭野における複数の感覚領域が同時に賦活することが分かっている(Cardin & Smith, 2010):MT+、V6、VIP、CSv、PcM、p2v、PIVC。しかし、これらの感覚領域の内、ベクションの表象に関与している領域はまだ明らかにされていない。そこで、2014年度は交付申請書の研究実施計画に基づき、以下の研究を行った。 まず、fMRIを用いて、以上の感覚領域の賦活がベクションの有無によって異なるか検討した。その結果から、ベクションはMT+・V6・VIP・PIVCの活動を反映していること、またVIPが自己運動に関連する視覚情報と前庭情報の統合いおいて重要な役割を果たしていることが示唆された。 そこで、DWI研究(2014年度当時スタンフォード大学所属竹村氏との共同研究)では、fMRIを用いてオプティックフロー選択性領域を同定した上で、同一被験者を対象にDWIとトラクトグラフィーを用いて、これらの脳感覚領域がどのように白質を通じて情報を伝達しあっているのか検討した。その結果、頭頂葉の領域群と前庭野を結ぶ線維束が同定され、その解剖学的位置は先行する死後脳研究の知見と一致した(Sachs, 1892; Vergani et al., 2014)。これらは頭頂葉および前庭野のオプティックフロー選択性領域群がこの白質線維束を通じて連絡することで、視覚情報と前庭感覚情報の相互作用が生じる可能性を示唆した。 以上の研究結果はfMRIとDWIという2つの脳神経科学的手法を統合して用いた点において、特に新奇性が高く、研究結果のみでなく分析方法の確立という面でも大変意義のある研究といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題「視覚性自己運動感覚の神経基盤-複数感覚領域間結合の解明」の当初研究目的はオプティックフロー選択性脳領域のうちどの領域が自己運動知覚に関与しているか解明すること、それらの領域が自己運動感覚に必要な多感覚統合においてどのような役割を担っているか検討すること、および以上の処理に関わる脳領域間の白質連絡を検討することであった。 当初研究実施計画の通り、これまでの2年間で、海外研修や共同研究を通して研究に必要な手法を習得し、以上にあげる目的を達成するべく研究を行ってきた。研究の成果も国内外の学会で高く評価されている。 当初の研究実施計画と比較して「おおむね順調」に進展していると評価する理由は、視覚性自己運動感覚にかかわる脳領域間の白質連絡についての論文がまだ執筆段階であり、投稿できていないためである。DWIの解析には莫大な計算量がかかるため、解析に予想以上に時間がかかった。ただし、執筆は順調に進んでおり、新年度の初旬にはCerebral Cortex誌に投稿できる見込みだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、計画通りこれまでの研究により得た知見を活かして視覚性自己運動感覚について脳の機能ならびに構造の面から考察する。また、脳領域間の機能的結合について因果性解析法を用いて評価する。
研究3. 領域間の機能的結合を検討する 本研究ではfMRIを使い、視覚性自己運動感覚に関わる脳領域間のの神経活動の結合(機能的結合)を探求する。それらがどのように影響しあっているか、またその機能的結合の状態が実験による変化(ベクション強度)でどのように影響されるかを、因果性解析法を用い評価する。脳機能イメージング研究における領域間結合解析法の代表的な方法の1つとしてDynamic Causal Modeling (DCM)があげられる(Friston,2003)。ただし、解析法として最も新しいDCMには根強い批判もある(Keibel et al., 2009)ため、研究に取り組む前に最適な因果性解析法を選ぶ必要がある。
また、本年度は研究の遂行と並行して、昨年度までに行った研究成果の発表にも重点をおく。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Categorical perception during active discrimination of consonants and vowels2014
Author(s)
Altmann, C.F., Uesaki, M., Oko, K., Matsubayashi, M., Mima, T. & Fukuyama, H.
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Journal Title
Neuropsychologia
Volume: 64
Pages: 13-23
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] On the role of suppression in spatial attention: Evidence from negative BOLD in human subcortical and cortical structures2014
Author(s)
Gouws, A.D., Alvarez, I., Watson, D.M., Uesaki, M., Rogers, J. & Morland, A.B.
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Journal Title
The Journal of Neuroscience
Volume: 34
Pages: 10347-10360
DOI
Peer Reviewed
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