2013 Fiscal Year Annual Research Report
重いクォークを含んだメソンが作るエキゾチックハドロンの構造と反応の研究
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13J05858
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大古田 俊介 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ハドロン / ヘビークォーク対称性 / エキゾチックハドロン / メソン分子状態 |
Research Abstract |
我々の目標は重いクォーク領域におけるメソン分子状態の性質解明である。その目標のもと、当該年度では特に重いメソン分子状態の崩壊の性質に注目して研究を行った。重いメソン分子状態の有力な候補であるZbは崩壊時に従来の単純なクォーク模型では説明できないような振る舞いを起こすことが実験によって明らかになっている。そこで我々はZb->r(nS)π(n=1,2, 3)崩壊の解析に注目してヘビーハドロン有効理論を用いて解析を行った。その結果、実験値を再現することに成功し、崩壊のメカニズムにはメソンループと形状因子が主体的な役割を担っていることを明らかにした。この実験値の振る舞いを説明したのは我々のグループが初めてであり、従来のクォーク模型を越えたエキゾチックハドロンの崩壊のメカニズムの一端を明らかにした点で、重要な研究であると考えられる。本研究の成果はAmerican Physical Review誌にまとめられ、発表された。 重クォーク極限では、重クォークのスピン相互作用が抑制されるのが原因で、スピンパートナーの関係にある重いハドロンがスピン縮退をすることが知られている。このスピンパートナーの関係は通常のメソン及びハドロンでは知られていたが、エキゾチックハドロンの場合は分かっておらず自明では無かった。我々は重クォーク極限におけるスピン構造を解析する手法を構築し、エキゾチックハドロンのスピンパートナーの関係を明らかにした。この研究によってハドロン分子状態の質量スペクトラムを明らかにしただけでなく、生成・崩壊の性質までのパラメータ依存無く決定することが可能になった。世界に先駆けてエキゾチックハドロンの重クォーク対称性を議論したことで、エキゾチックハドロンの性質の理解が進むのはもちろんのこと、その根底にある基礎理論である重クォーク対称性に関する我々の知見もより一層深まると期待される。本研究の成果はPhysics Letter誌に発表、また日本物理学会年次大会にて口頭発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であるメソン分子状態の崩壊の性質を、特にZb->rπ崩壊に注目することで、そのメカニズムの一端を明らかにして論文に発表することが出来た。また、共同研究として重クォーク極限のハドロン分子状態の研究も進展させることが出来、成果を学会で口頭発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き重クォークを含んだメソン分子状態が作るエキゾチックハドロンの研究を続ける。重クォーク極限における重いメソン分子状態のスピン縮退を調べ、その質量スペクトラム、引力の起源を明らかにする。さらに、波動関数から得られる情報を基に、生成・崩壊の性質を調べる。 また、Zb->rπ崩壊の解析で用いたモデルを他の崩壊Zb->hbπ、Zb->ηbrにも適用し、その崩壊メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(11 results)