2014 Fiscal Year Annual Research Report
広視野・超軽量X線望遠鏡とマイクロカロリメータを用いた電荷交換反応の開拓
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13J05865
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小川 智弘 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | X線天文 / MEMS / Wolter I 型光学系 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は日本が世界をリードするマイクロマシン(MEMS)技術を用いた、従来のX線望遠鏡に比べて一桁以上軽く、秒角の角度分解能を達成しうる、究極の軽量望遠鏡を将来衛星のために開発している。MEMS 技術の一つ、ドライエッチングを用いて数百 μm 厚の薄いシリコン基板に、幅 20 μm 程度の微細な貫通穴を多数開け、 その側壁をX線反射鏡として用いる。ドライエッチングでは X 線反射に必要とされる数 nm rms 以下の 滑らかな側壁の実現は困難なため、高温アニールで平滑化し、基板を高温塑性変形で球面に曲げて、望遠鏡の 1 段分とする。曲率半径の違う基板を 2 段に重ねることで宇宙X線で使用される Wolter I 型望遠鏡となる。 これまでで得られたイメージから、有効面積 32 mm^2、角度分解能 4.2 分角である。これは搭載目標となる、地球磁気圏可視化衛星GEO-Xの要求である、有効面積 >300 mm^2を達成していない。 そこで26年度の開発では、これまで焦点距離が設計より長くなってしまう問題の改善のため高温塑性変形用時に使用する治具を新たにデザインした。これらの改善を行いX線測定を行いイメージを取得した。その結果から、焦点距離が新デザインの望遠鏡と高温塑性変形用治具により25年度は784 mm だったものが 548 mm となり改善することができた。一方で、有効面積については反射面の形状から予想される理論値より低くなっていた。 また環境試験では衛星搭載に向けた振動試験を行い現在のデザインで望遠鏡の垂直方向の加振に耐えられることが分かった。 また、私は大質量星形成領域の広がったX線放射の研究も同時に行っている。カリーナ星雲のすざく衛星のデータ解析から新たなモデルの電荷交換反応のシミュレーションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在開発を行っている軽量望遠鏡を搭載する衛星(地球磁気圏可視化衛星GEO-X)の提案と検討が行われている。この搭載要求を満たすための開発を行い、分解能と有効面積を劣化させている原因について本年度のX線試験から分析を行った。要求まで分解能、有効面積ともにあと1桁と改善され、問題であった焦点距離も設計値に近くなった。問題点の洗い出しという面において重要な結果が得られた。 また本望遠鏡では初めてとなる、衛星搭載に向けた環境試験の一つである振動試験を行った。この振動試験において懸念されていた加振による破壊等は起こらず、共振点も測定することができた。今後の各種環境試験に向けた初期実験として重要な結果となった。 電荷交換反応の研究については、当初データ解析を行う予定であったAstro-H衛星の打ち上げが延期されているためシュミレーションを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
軽量望遠鏡においては25年度のX線測定結果を分析した結果、分解能と有効面積の劣化原因として、ドライエッチング時に開ける穴の垂直性が問題となっている可能性が高かった。今後は基板の断面から垂直性を確認すると共に、ドライエッチングのレシピを見直し、分解能を向上させ衛星搭載要求を満たすプロトタイプの完成を目指す。 また衛星搭載用の周辺機器の検討とともに、実際に宇宙空間で使用するため環境試験に耐えうるの衛星設計を進める。同時に環境試験の一つであるでは、既に行った垂直方向の加振に加え、並進方向の加振を行い性能を確かめる。 電荷交換反応の研究では、Astro-H衛星のデータが使用できないため、すざく衛星等のアーカイブデータを使用し、基礎研究を進める。
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