2014 Fiscal Year Annual Research Report
細胞がん化の早期診断のための生物発光酵素固定フォトニック結晶の創製
Project/Area Number |
13J05911
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮下 惟人 広島大学, 先端物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 生物発光 / 反磁性微結晶 / 磁場配向 / 光散乱制御 / がん細胞計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は以下の研究を遂行した。
1,平成25年度に続き溶液中での細胞への光ビームの照射が磁気的に制御可能なことを確認するため、クロロフィル蛍光を発する光合成微細藻をモデル細胞に利用した測定を行った。新たに磁場中での光応答性藻類細胞の蛍光計測系を構築し、クロロフィルaおよびクロロフィルcをもつハプト藻の一種であるPleurocrysis carteraeの蛍光スペクトル強度の計測を行った。細胞培養系にグアニン結晶板を混ぜ、結晶の方向を磁場配向制御することにより、光合成光反応系におけるクロロフィル分子の励起を示す680nmの蛍光の応答性の向上が確認された。106-107 / mLの密度比で結晶を添加することで培養系内部での多重散乱(透過光損失を抑制する効化)により局所的に細胞への光供給効率を10-20%向上させることに成功した。加えて磁場印加による培養液内での光伝播の空間的制御を行い、磁場のON/OFFによる数%の供給効率のその場制御が可能なことを確認した。
2,ルシフェリンルシフェラーゼの溶媒中にグアニン結晶板を添加し、発光中のスペクトルおよび発光強度の時系列変化を計測した。外部からの磁場印加によって配向したグアニン結晶板から散乱されたスペクトルも解析した。結果として,ルシフェリンルシフェラーゼ発光溶液中にグアニン結晶板を添加することで検出光強度の増加が確認された。また、外部磁場をグアニン結晶板が検光軸と平行に磁場配向する条件で加えた際にも検出強度の僅かな増加が見られた。一方で、結晶近傍(ミクロ観察系)での効化を検出するには至っておらず現在の実験系での測定誤差も大きい。これらの事項を反省し、研究戦略を再検討(マクロ領域での光学場の差異を検出することが可能な系による組織計測への応用)し、27年度はマイクロ結晶の配向場を利用したマクロ領域上での計測系の構築を目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題の目標として、細胞物性に着目した細胞がん化の迅速かつ定量的なチェックが可能な「細胞分光技術」の開拓を行う.これまでの研究で磁気トルクの物理刺激に対する細胞骨格タンパク配向応答の複屈折計測による検出してきた.これらの研究結果を進展させ,生物発光を用いて非侵襲的に(細胞染色することなく)細胞内成分の挙動を計測することを目的としている.
これまでの経過として,まず結晶型マイクロ光源の効化の検証のためマクロ系でのグアニンマイクロ結晶による細胞への光照射増加効化の確認を行った.蛍光色素を持つ藻類細胞を用いた分光計測から結晶添加,さらに外部磁場印加による結晶光反射面の配向制御を行うことで蛍光強度の増加が観察された. 一方で,ルシフェリンルシフェラーゼ発光反応系をグアニン結晶表面上で励起させ,反射光を光源とする計を検討してきた.ルシフェラーゼを固定した磁化率異方性結晶を作製する実験も進めてきた.これまでにグアニンマイクロ結晶を含んだルシフェリン発光基質またはルシフェラーゼ触媒酵素のサスペンション自体を結晶化させる手法を行ってきたが,この手法では発光を確認できなかった。また,ガラス基盤,高分子フィルム上で低濃度のアガロースゲルを一度コート(自然乾燥)した後にルシフェラーゼを浸透させた試料では発光を確認することができたものの,微結晶自体への生物発光分子固定の実現ができていない状況にある.原因として,酵素活性が失われている可能性が大きい他,結晶化しているルシフェリン基質の溶解速度が非常に遅いために反応効率が悪いためと考えられる. 以上のことを踏まえ,抗原抗体反応による固定法を迅速に進める必要がある.これまでの試行実験からエポキシ基を持つ磁性微粒子をグアニン結晶の表面に固定化することに成功しており,これにビオチンアビジン抗原抗体反応でルシフェラーゼ酵素を固定する系を検討している.
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞内成分(細胞骨格タンパク)の挙動に伴う偏光成分変化を細胞サイズの結晶板からのマイクロ反射光の照射によって計測する.具体的には「がん細胞計測」のために下記の2点について研究を遂行する. ・「生物発光と磁化率異方性微結晶を用いた光源の作製」 フレキシブル性を有するシート型チャンバーの作製を行う.細胞のマイクロビーム照射蛍光(偏光)計測を磁場中で可能とするための,光学系と細胞収容系(改良型細胞チップ)の作成を行う.試作したシート型光源への細胞接着性の評価により材質の選別を行う.また,シートの特性として,微結晶層と発光層を分離した多層構造とし,発光層の光を結晶層で反射増幅することより観察(検光)方向への指向性を持った光源を作製する.外部磁場の印加により,微結晶の配向面を揃えることで上記の特性を制御する.並行してルシフェラーゼを固定した磁化率異方性結晶を作製する.並行して無機および有機の各磁化率異方製微結晶1粒子への化学修飾(抗原抗体法・架橋法など)技術を習得し,蛍光顕微鏡を用いて発光増幅の検出を行う.また,この結晶表面で発光励起させ細胞に直接照射する測定に用いるための光学特性(スペクトル,偏光成分)を分光計測する. ・作製した光源を用いたがん細胞等の計測 細胞内成分(細胞骨格タンパク質・膜リン脂質など)の挙動解明のため,磁気トルクによる細胞内の骨格タンパク(微小管など)の配向挙動に伴う偏光成分変化を結晶板により反射増幅された生物発光照射を用いて計測する.計測対象として,哺乳動物由来の腫瘍細胞や心筋細胞などを予定する. 所属機関の付属病院,研究所,受入研究者の共同研究の専門家の方々から多角的に助言・指導を賜り,特別研究員としての目標に上記研究内容の論文公表を定める.最終的に細胞がん化検出するための,生物発光-マイクロ結晶型バイオセンサ構築の道筋を具体的に示し研究報告にまとめる.
|
Research Products
(3 results)