2013 Fiscal Year Annual Research Report
Lats2によるZnF型転写因子の包括的リン酸化を介した細胞機能制御の解析
Project/Area Number |
13J05951
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鳥形 康輔 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | LATS2 / がん / エピジェネティック制御 |
Research Abstract |
我々はがん抑制遺伝子Lats2キナーゼノックアウトした細胞の解析から、Lats2は細胞の「脱分化過程」に関する遣伝子の転写を包括的に制御していると考え、本年度は以下のふたつの観点からアプローチした。 ①多様なZnF型転写因子を介した転写制御 : これまでの共同研究者との成果から、Lats2がある種のZnF型転写因子をリン酸化することで下流遺伝子の転写制御に寄与していることを見出している。我々はLats2が他の多種類のZnF型転写因子を包括的にリン酸化するモデルを想定して検証した。今回我々は多種多様なZnF型転写因子のリン酸化を一度に認識・検出できる抗体の作製に成功した。この抗体を用いて多様なZnF型転写因子群のリン酸化が起きる細胞周期M期に注目し解析した。結果、Lats2はM期リン酸化ZnF転写因子群と結合するが、直接はそのリン酸化に寄与しないことを見出した。また質量分析法によりリン酸化されるZnFドメインとの結合因子を探索したところ、キナーゼとしてCDK15を検出した。これらの結果は、M期におけるZnF型転写因子群のリン酸化制御に関して、CDK15を加えた新規な制御シグナルを示唆するものといえる。 ②クロマチン修飾制御を介した転写制御 : Lats2依存的に転写変動する遺伝子にはピストン修飾のようなエピジェネティック制御を受けることが知られる遺伝子が多く含まれた。そこでLats2がエピジェネティック制御機構を介して下流遺伝子の転写を制御する可能性を想定して検証した。結果、Lats2が欠失した細胞ではPRC2とよばれるヒストン修飾酵素複合体の制御が破たんすることを見出した。この知見はLats2が転写因子を介さずにクロマチンの動構造に働きかけて転写を制御することを示唆する全く新規なものである。本年度は本発見を中心にふたつの国内学会でポスター発表による成果の発信を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Lats2による下流遺伝子の包括的な転写制御の仕組みについて、Lats2がエピジェネティック制御機構に作用して下流遺伝子の転写制御に寄与するという新規な知見を得た。またその制御機構がヒト・マウスにおいて共通して存在する示唆を得た。今回見出したLats2シグナルはがんの悪性化・脱分化との関連も示唆され、研究は計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
Lats2のエピジェネティック制御機構への作用形態・標的因子についてより詳細な解析を進める。Lats2が影響するエピジェネエティック修飾を同定し、そのゲノムワイドな分布や協働する因子・シグナルを明らかにする。またそれらの解析から得られる知見と、実際のがんなど疾病との関連性にも注目して検証する。
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Research Products
(5 results)