2013 Fiscal Year Annual Research Report
ムチン型糖鎖転移酵素GALNT3によるインフルエンザウイルス増殖制御機構の解明
Project/Area Number |
13J05979
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 祥子 京都大学, ウイルス研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インフルエンザウイルス / ムチン / GALNT3 / miRNA / 糖鎖 / ウイルス感染 / ゲノム転写・複製 |
Research Abstract |
これまでに私たちは、A型インフルエンザウイルスの一種であるPR8株を感染させた細胞において、ムチン型糖転移酵素GALNT3を制御する2種類の細胞内マイクロRNA (miRNA)を発見した。さらにPR8株感染細胞では、GALNT3の発現が顕著に増加することを確認した。そこで本研究では、これらmiRNAのGALNT3発現制御を遺伝子レベルで解明するために、疑似miRNAを293T細胞に導入しGALNT3の発現量を検討したところ、GALNT3は有意に発現減少した。さらに、pRL-TKベクターのルシフェラーゼ遺伝子下流領域にGALNT3 mRNA 3' UTRの全領域を挿入したプラスミドと疑似miRNAを293T細胞に導入すると、ルシフェラーゼ活性は有意に減少した。また、予測したmiRNAのGALNT3 mRNA 3' UTRに対する結合領域に変異を入れた変異型のプラスミドを作製し、同様に検討を行ったところ、ルシフェラーゼ活性の変化は認められなかった。これらの結果から、2種類のmiRNAはGALNT3 mRNA 3' UTRに直接結合することにより、GALNT3の発現を制御していることが明らかとなった。 これまでの研究で、PR8株を感染させたヒト由来上気道細胞では、GALNT3の発現上昇とウイルス複製との関連性を示唆する結果が得られた。このことから、GALNT3に対するsiRNAを293T細胞に導入し、PR8株を感染させて細胞内ウイルスゲノム量と細胞上清中のウイルス力価を検討したところ、両者ともに有意に減少した。さらに、2種類の疑似miRNAの細胞内導入によりGALNT3の発現を抑制し、PR8株を感染させたところ、ウイルスゲノム量とウイルス力価について同様の結果が得られた。これらの結果から、ウイルス感染によって発現上昇したGALNT3は、ウイルスの複製を促進することが考えられた。これに加えて、GALNT3が細胞核内におけるウイルスゲノムの転写・複製を促進している可能性を考え、すでに確立されているミニゲノム複製系を用いた実験系を試みた。その結果、siRNAの細胞内導入によるGALNT3の発現抑制により、ポリメラーゼ活性は顕著に減少した。したがって、ウイルス感染により発現が上昇したGALNT3はウイルスゲノムの転写・複製を促進するこしが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、疑似miRNAとGALNT3 mRNA 3' UTRを導入したプラスミドを用いたレポーターアッセイ法により、GALNT3の発現が抑制したことから、2種類のmiRNAはGALNT3 mRNA 3' UTRに直接的に結合し、GALNT3の発現を制御していることを明らかにした。これに加えて、siRNAと疑似miRNAを用いたGALNT3の発現抑制により、GALNT3がウイルス複製を促進する可能性を示唆する結果が得られた。さらに、これらを発展させ、ミニゲノム複製系を用いた実験では、GALNT3が細胞核内におけるウイルスゲノム転写・複製に関与する結果も得られたことから、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度においては、GALNT3とウイルス複製の関連性を詳細に解析するために、GALNT3ノックアウトマウスからマウス胎児繊維芽細胞(MEF)を取り出し、PR8株を感染させウイルスゲノム量の検討を行う。さらに、ウイルス感染で発現上昇したGALNT3のムチンに対する糖鎖修飾作用について、レクチンアレイ法やレクチンプロット法を用いて詳細に解析することを計画している。
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Research Products
(9 results)