2014 Fiscal Year Annual Research Report
点欠陥・界面準位の低減による超高性能炭化珪素バイポーラトランジスタの実現
Project/Area Number |
13J06044
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥田 貴史 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 炭化ケイ素 / バイポーラトランジスタ / 点欠陥 / DLTS法 / キャリア寿命 / 熱酸化 / 水素熱処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
SiC(炭化珪素)は優れた物性値を有しており、次世代パワーデバイス材料として注目されている。SiCを用いたバイポーラトランジスタ(BJT)は、高耐圧低損失のパワーデバイスとして期待されているが、電流増幅率がいまだ十分ではない。点欠陥による深い準位やベース・エミッタ接合での界面準位を介した再結合などが増幅率を制限している。これらを低減し高性能BJTを実現することが本研究の目的である。 当該年度は、4H-SiCに存在する深い準位(点欠陥)についてDLTS法を用いて調べた。DLTS法では容量測定の過渡応答を解析することで深い準位の電気的特性を調べることができる。さらに、光照射を組み合わせたMCTS法を導入した。DLTS法ではバンドギャップのうち多数キャリア側のトラップしか観測できないが、MCTS法では光照射により少数キャリアを導入することでバンドギャップのうち少数キャリア側のトラップを観測することができる。この手法により、点欠陥低減手法である熱酸化および高温Ar処理前後における点欠陥の消滅・生成を明らかにすることができた。また、p型SiCにおいても熱酸化によって炭素空孔起因と推測される点欠陥の消滅を確認できた。すなわち、熱酸化によるキャリア寿命向上手法はp型SiCでも有効であると裏付けることができた。 そこで、p型SiCのキャリア寿命向上を目指し、低濃度p型エピ層に対して、上記の熱酸化手法にくわえて、昨年度見い出した水素熱処理による点欠陥の不活性化を試みた。その結果、成長直後のキャリア寿命2.8usを熱酸化により5.1usへ向上することができ、さらに水素熱処理後をおこなうことで10usにまで向上することができた。低濃度p型エピ層のキャリア寿命向上には、熱酸化による炭素空孔低減と水素熱処理による点欠陥の不活性化が重要であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度はキャリア寿命向上手法の裏付けとして、バンドギャップ中に存在する深い準位を明らかにするため、DLTS法およびMCTS法を用いて系統的な実験を行った。その結果、点欠陥低減手法である熱酸化および高温Ar熱処理前後における点欠陥の消滅・生成を明らかにすることができた。さらに、これらの点欠陥低減手法にくわえて、昨年度見い出した水素熱処理による点欠陥の不活性化技術を組み合わせて、長らく課題であったp型SiCエピタキシャル層におけるキャリア寿命を10usにまで向上することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度で向上させたキャリア寿命を解析すると、表面再結合によってキャリア寿命が制限されていることが分かってきた。表面再結合速度を低減させるための表面パッシベーションの開発が必要である。これまでSiCでは表面再結合に関する研究はほとんどされておらず、基礎的な検討から必要である。表面再結合に敏感なエピタキシャル層を用意し、キャリア寿命の変化から表面再結合を評価する予定である。 またこれまでで得られた結果を総合し、バイポーラトランジスタを実際に作製し、増幅率の向上をねらう。
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