2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J06112
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十嵐 渉 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 新規抗生物質 / キラルプール法 / 天然物全合成 / アルドール構造 / β-OCC反応 |
Research Abstract |
私の研究テーマは新規抗生物質Enacyloxin IIaの合成研究である。Enacyloxin IIaはFrateuria sp. W-315株より単離された直鎖のポリエン系抗生物質であり、グラム陰性及び陽性両細菌に対して幅広い抗菌スペクトルを有する。作用機序は、細菌のタンパク質伸長因子EF-Tuに結合することで、その伸長阻害作用を示すことが分かっている。特に、私は本化合物に着目した。幅広く用いられているポリエン系抗生物質は、マクロラクトンに代表される様に環状構造を有しており、汎用性が高い反面多剤耐性菌を産み出し易いという特徴がある。それに引き換え、Enacyloxin IIaは鎖状構造であるために、昨今問題となっている院内感染の原因である多剤耐性菌に対する有効な新規薬剤候補化合物であると考えた。そこで、私は構造活性相関研究及び生物活性試験を視野に入れた効率的な全合成研究に着手することにした。合成におけるポイントは3つある。1つはフラグメンテーションである。シクロヘキサン部位と23炭素から成る直鎖部位で構成される本化合物を4つの部位、シクロヘキサン部位、C1'-C8'部位、C9'-C15'部位、C16'-C23'部位に分割しそれぞれ調製して、集約的にカップリングすることで効率的に合成できると考えた。現在、必要な部位全てを調製し、直鎖部位の構築に必要なカップリング方法の確立に成功した。2つ目はキラルプール法である。本化合物が有する多くの立体化学をキラルなビルディングブロックより構築することで高い純度でEnacyloxin IIaを合成しようと考えた。3つ目はダイアニオン法である。C9'-C15'部位とC16'-C23'部位のカップリングに新たなアルドール構築法であるβ-OCC反応を考案し、立体特異的に反応させることに成功した。本反応によって、アルドール構造がよく見られる抗生物質の合成法に多様性をもたらし、今まで合成困難だった化合物の合成に導けるものと期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階で、全合成に必要な部位の調製の全てに成功した。また、新手法β-OCC反応及びHWE反応を用いることで直鎖部位の構築法を確立している。そのため、研究目標の一つである全合成に肉薄しているといえるから、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、まずCP-C8'部位、C9-C15'部位、C16'-C23'部位に対してカップリング及び官能基変換を経て、鎖状部位を完成させることが目標である。続いてシクロヘキサン部位との選択的なアシル化によって全合成を目指している。また、随時アナログに必要な部位を合成し有効なカップリング法を検討していく予定である。
|
Research Products
(1 results)