2014 Fiscal Year Annual Research Report
離散選択モデルのセミパラメトリック、ノンパラメトリック推定と検定
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13J06130
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩澤 政宗 京都大学, 経済研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 特定化検定 / 多項選択モデル / パラメトリックブートストラップ / ノンパラメトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
多項選択モデルは経済学の様々な分野において多く応用されている手法である。今年度は、選択肢に順序がない場合の多項選択モデルの特定化検定を考察した。モデルに置いた仮定が間違っている場合、推定結果に対して間違った解釈をしてしまう事が考えられる。この為、この様な仮定が正しいかどうかを検定する為の手法は有用であると考えられる。 一つ目の検定手法のアイディアは、検定したいパラメトリックな特定化の下でのモデルと、パラメトリックな仮定を置いていないノンパラメトリックなモデルの間の距離を使った検定方法である。二つ目は、特定化が正しかった場合に成立するような条件、特に、モーメント条件を用いた検定方法である。これらの二つの検定統計量は漸近的にカイ2乗分布に従い、標本の大きさに依存しない対立仮説の下で標本が十分に大きい時に帰無仮説を棄却する確率が1になる事を示した。また、標本が大きくなるにつれて帰無仮説に近づくような局所対立仮説の下での検定統計量の性質を考察した。標本数が十分に大きくない場合には、パラメトリックブートストラップによって検定の棄却域を得られることが分かった。本研究で提案した二つの検定は、パラメトリックな特定化により正しい選択確率をうまく近似しているときには検出力が弱く、近似がうまくいっていない場合には検出力が高くなっている事をモンテカルロシミュレーションにより確認した。現在この研究をまとめた論文は海外ジャーナルへの投稿に向けて最終調整を行っている。 また、モデルの一部に多項選択モデルを用いて発展途上国の子供の教育を主なテーマとした実証分析を行った。本研究では、カンボジアの農村地区におけるアンケート調査も行い、発展途上国の持続的な経済発展において重要なテーマである子供の教育に対して現実問題を踏まえた有用な政策を提言した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究の目的に沿添って着実に研究を進める事ができた。本研究課題の一つの研究目的は、離散選択モデルの理論研究を通して、当モデルを用いた実証研究の政策提言や科学的根拠の提示がより適したものになるようにすることであった。本年度は、理論研究のみでなく、実際にデータを使った分析を行う事で、離散選択モデルの理論研究に関する多くの示唆を得る事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で提案している多項選択モデルの特定化検定では、カーネル関数を用いたノンパラメトリックな手法を用いているために応用上いくつかの問題点が存在する。一つ目は次元の呪いと呼ばれるもので、サンプルサイズを固定した時に共変量の次元が大きくなるにつれて推定の精度が悪くなるという問題である。実際にデータを使う応用の場面では、共変量の次元が大きくそれに対して十分なサンプルサイズが得られない場合が多く存在する。この場合、これまでの研究で提案している検定方法ではモデルの特定化の誤りをうまく検出する事ができないかもしれない。二つ目は、バンド幅の選択の問題である。カーネル関数を用いたノンパラメトリックな手法では、バンド幅と呼ばれるものにある値を与えなければならない。しかし、実際にどのようにバンド幅を選ぶのかという問題には様々な提案がなされているが、絶対に正しい手法は存在していない。そこで、今年度は上に挙げた二つの問題が存在しない検定手法を考案し、その漸近的な性質を明らかにする。また、モンテカルロ実験を用いて、サンプルサイズが小さいときのその検定手法のサイズや検出力などの特性を分析する。
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Research Products
(7 results)