2013 Fiscal Year Annual Research Report
中部アフリカ熱帯林における深層土壌の生態学的意義-オキシソルにおける窒素回収機構
Project/Area Number |
13J06387
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴田 誠 京都大学, 地球環境学堂, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アフリカ熱帯林 / オキシソル / リン動態 / 酸性フォスファターゼ / マメ科樹木 / カメルーン |
Research Abstract |
これまでの中部アフリカ熱帯林における申請者の研究から、中程度の酸性土壌に成立する熱帯林では、貧栄養な土壌に成立しているにもかかわらず、土壌中の下方浸透水を通して窒素(NO_3-)が表層土壌で回収されきらずに大量に下層土壌へ移動している一方、強酸性土壌に成立する熱帯林では既存の知見と同様に表層土壌のルートマットから下層へ窒素が漏れる事無く回収されていることが明らかとなっており、採用第1年度である平成25年度は、酸性度の違いに起因する異なる窒素動態が熱帯土壌で欠乏しやすいとされる元素であるリンの動態にどのように影響しているかを調べた。土壌中の利用可能な窒素が増加すると、その窒素をエサとする微生物や窒素固定菌の宿る根において窒素を大量に必要とする(~15%)酵素である酸性フォスファターゼ(Treseder and Vitousek, 2001)の生成が促進される可能性があると報告されている(Gei and Powers, 2013)。このことから本研究では、「強酸性土壌の地点に比べてマメ科植物の優占割合が高く、更にリター中の窒素含量、表層土壌の硝酸態窒素量が共に高い中程度酸性土壌の地点では、酸性フォスファターゼ活性が高く、リン獲得の為に多くの窒素を投資しており、それが両森林で異なる窒素動態の原因である」という仮説を立て、現場でのみ測定可能な酵素活性を測定した。 その結果、土壌微生物由来の酸性フォスファターゼと植物根由来の酸性フォスファターゼの至適pHが異なる(土壌微生物はpH5、植物根はpH4)ことが明らかになった。酸性フォスファターゼ活性を土壌微生物由来と植物根由来に分けて測定し、かつ至適pHまで詳細に調べた研究はおそらく世界で初めてであり、この事は、植物根が有機酸等の酸を分泌する事によって根圏土壌のpHを低下させている可能性を示唆している。土壌酸性度の異なる熱帯林で酵素活性を比較してみると、根の重量当たりでは酸性度の弱い土壌、すなわち下層への窒素フラックスの大きい土壌での植物根活性が大きく、上述の仮説を支持した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
土壌微生物由来の酸性フォスファターゼと植物根由来の酸性フォスファターゼの至適pHが異なることを明らかにした事は世界で初めてであり、また、この結果は当地域の熱帯林において土壌酸性度にかかわらず根圏土壌のpHがバルク土壌に比べて低い事を示す、非常に興味深いものであるため。
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Strategy for Future Research Activity |
根の重量当たりの酵素活性では酸性度の弱い土壌、すなわち下層への窒素フラックスの大きい土壌での植物根活性が大きかったが、この値に面積当たりの根量を乗じて単位面積当たりの酵素活性には大きな違いがみられなかった。この結果は乾季中のものであり、更に定期的にサンプリングを続けて季節変動を解析することで、熱帯林のリン獲得において窒素が表層土壌中で果たす役割を季節ごとに明らかにする事が可能となると考えている。
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Research Products
(3 results)