2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J06481
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山路 晃広 東北大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 結晶成長 / シンチレータ / 赤外域発光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、放射線医療時の投与線量をワイヤレスでリアルタイムに計測するシステムを構築するための近赤外領域発光シンチレータを開発することである。具体的には、人体による吸収が少ない波長650-1100nmの近赤外域で高輝度に発光するシンチレータの作製を目標とする。本年度前期はマイクロ引下げ法を用いて賦活剤としてNd^<3+>及びYb^<3+>を添加した酸化物結晶を育成した。ホスト結晶としては、レーザー結晶として高効率が報告されているCaYAIO_4やバンドギャップが小さいBaTiO_3、LiNbO_3を選択した。これらの結晶をX線励起による発光スペクトルを測定したところ、目的としたf-f遷移に起因する発光ピークがそれぞれ観測された。しかし、発光量測定としてパルスハイト測定を試みたが有意な信号を得ることができなかった。これは、発光波長領域における検出器の量子効率が極めて低いこと、発光減衰時間が長いこと(数百μs~数msオーダー)による検出ロスまたは発光量そのものが低いことに起因する。 そこで、本年度後期では700-800nm近傍で発光が期待されるCr^<3+>のd-d遷移を活用すべく、賦活剤をCr^<3+>にして結晶育成を行った。ホスト材料もガーネット型結晶及びペロブスカイト型結晶を中心に育成し、結晶の構成元素を順次置換することでバンドギャップを制御し、発光量の増大及び発光波長の長波長化を目指した。Y_3Al_5O_<12>のAlをGaに置換していくことでCr^<3+4>A_2→^4T_1及び^4A_2→^4T_2の吸収バンドが長波長へシフトしていきバンドギャップが小さくなることを確認した。また、Gd_3Ga_5O_<12>結晶においてα励起によるパルスハイト測定に初めて成功した。Bi_3G_4O_12結晶と比較して約30%程度の発光量を示した。実際のモニタリングシステムでは入射放射線を積算させて検出するので、十分に明るいことが示される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
希土類元素を賦活剤にするよりも、遷移金属元素にした方が高効率であることを見出すなど、目に見える成果が得られている。パルスハイト測定が可能な程度の発光量を示すサンプルの製作の成功や結晶場の変動に伴う発光ピークの変位の観測等の成果も既に出始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定としては、実際の利用方法を見据えて積分型での発光量測定も予定しており、そのための測定装置のセットアップを現在準備中であり、主要な部材の準備は完了している。賦活剤としては引き続きCr^3+を添加し、ホスト結晶としてはバンドギャップの観点からベロブスカイト型結晶に焦点を絞って、結晶を育成していく予定である。他の遷移金属元素(Ti3+, Fe3+)の添加や当初予定していたジルコン型結晶の探索についても検討している。良好な特性を示す試料については動物肉を用いた透過実験により実証実験を行う次第である。
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