Outline of Annual Research Achievements |
NPC1L1は消化管の細胞膜上に発現する膜タンパク質であり, その機能は食事から得られるコレステロールを吸収するというものである. したがって, NPC1L1阻害剤は脂質異常症の治療薬となることが期待され, 既にエゼチミブという薬が使われている. エゼチミブ以外の阻害剤も探索されてはいるが, これらはすべて同じメカニズムで作用すると考えられる. それに対して我々は, NPC1L1のホモログであるNPC1に関して得た知見をもとに, NPC1L1の, 従来知られていたのとは異なる新たなステロール結合部位を標的とし, エゼチミブとは結合部位が異なる阻害剤を見出した. この阻害剤の結合部位を明らかにすることは, NPC1L1による輸送のメカニズムを解明する上で重要であると考え, これに着手した. 結合部位の同定には光親和性標識法を利用できると考え, プローブの設計を行った. しかし, 構造活性相関研究の結果から, 既存の光反応性基の利用は困難だと考えられた. そこで, 八員環より小さな環状アルキンが高い反応性を有することに着目し, これを光依存的に発生させられれば, NPC1L1を含む多様なタンパク質に対する光親和性標識に利用できると考えた. しかし, 環状アルキン類の発生法は限られており, 反応性に関する知見も光親和性基としての応用を目指す上で不十分であった. これに対し我々は, 単純な環状ケトンから合成できるスルフィニルトリフラート類にGrignard反応剤を作用させることで, 構造多様性に富んだシクロヘプチン類を効率よく発生させられることを見出した. さらに, これらのシクロヘプチン類が1,3-双極子と円滑に反応することを明らかにした. 今後はこれらの高反応性環状アルキン類を光依存的に発生させる方法について検討を行い, 光親和性基としての応用可能性について検討する予定である.
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