2014 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性細線中における磁壁電流駆動の磁化ダイナミクスの解明
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13J06569
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
山田 啓介 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 磁壁 / 磁化ダイナミクス / スピントランスファー / TbFeCo / 磁気光学カー顕微鏡 / 数値シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
アモルファル希土類-鉄族合金薄膜は、磁気光学記録媒体として活用されてきた材料で、最近ではTbFeCo細線中の磁壁電流駆動に関する報告がいくつかなされている[IEEE Trans. Magn. 46, 1695(2010), Appl. Phys. Exp. 4, 093002(2011)]。磁壁電流駆動の閾電流密度が約5×10^10 A/m^2と今までに報告された垂直磁化を持つ結果と比較すると一桁オーダーが小さい。しかしながら、この理由は明らかでなく、フェリ磁性体のスピントランスファー効果の作用についてより詳細な解明が求められている。そこで昨年度は、このフェリ磁性体におけるスピントランスファー効果の作用を調べるために、TbFeCoにおける磁壁移動ダイナミクスの研究を行った。電流による磁壁移動ダイナミクスを検証するために、TbFeCoの組成比が異なる膜での磁場に対する磁壁移動速度を調べ、結果を解析した。試料は、組成比が異なる三枚のTbFeCo膜[Ta(5 nm)/TbFeCo(15)/Ta(1)/Si-sub]を用いた。磁壁移動は、外部磁場に対する磁壁移動速度を磁気光学カー顕微鏡を用いて観測した。
各膜のTbFeCoでクリープ領域まで磁壁移動速度を観測することができた。各膜において保磁力が小さいほど、磁壁移動速度がクリープ領域において遅いことがわかった。磁壁速度と保磁力の依存性については明らかになったが、組成比と磁壁移動速度の依存性に関しては、不明な点が多かった。組成比と磁壁移動速度の解明は今後の研究課題である。また今回使用した膜において、細線幅600 nmの磁場/電流駆動を試みたが、磁壁が細線端にピンニングされ磁壁移動を観察することができなかった。TbFeCoの試料作製工程における細線端のピンニングの大きさを減少させることは、もう一つの今後の研究の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究課題の目標であるフェリ磁性体におけるスピントランスファー効果の詳細な解析までには至らなかった。目標を到達にするは、まず系統的にフェリ磁性体の組成比による磁壁移動現象を実験的に調べる必要があり、その中で発現される物性を理解する必要がある。この様に、解決しないといけない点が多数あるため。
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Strategy for Future Research Activity |
一年目の目標である、“電流&磁場による(Co/Ni)細線中の磁壁伝搬観測と磁化ダイナミクスの検証”の研究では、実験結果を数値シミュレーションにより再現することができており、論文作成中である。本年度は、この結果を論文として発表する。
また二年目の研究課題は、TbFeCo試料の細線内で磁壁を作ることが難しく磁壁移動を直接観測することが難しい。そのため、三年目の目標である"電流によるPdNi細線中の磁壁伝搬観測と磁化ダイナミクスの検証"を行う。しかしながら、本研究を進めるにあたり、パリ南大学との共同研究を行わなければいけないが、パリ南大学の装置(磁気光学カー顕微鏡)が現在動いていないため、研究計画の変更をする。今年度は、PdNiの膜特性の結果を解析する。もう一つの研究計画として、(Co/Ni)細線中の磁壁伝搬についての研究を行う。(Co/Ni)膜では、現在ジャロチンスキー・守谷相互作用と呼ばれる、磁化のねじれ効果が膜面に発現する新しい物性があり、この効果が存在する膜での磁壁移動の解明が求められている。そこで、この効果を取り入れた数値シミュレーションを行い、細線における磁壁移動について調べる。
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Research Products
(6 results)