2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J06578
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
青島 麻子 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国文学 / 源氏物語 / 婚姻 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、第1に、精緻な史料調査により、婚姻の観点から11世紀前後の時代状況を総体的に把握することを目指し、第2に、上述の成果を踏まえて平安朝物語の精読を行い、虚構の論理を浮かび上がらせることを目指している。 第1の史実調査については、本年も引き続き国文学から歴史学へと研究の場を移し、史料解読の方法を学んだ。具体的には前年度と同様に、本研究で中心に据えている11世紀前後に成立した古記録である『小右記』の精読作業を行った。また、所属先のゼミメンバーの前で自身の研究内容を発表する機会に恵まれ、これまでの学会・研究会発表では不可能であった、歴史学の専門家からの助言を仰ぐことができたことも大きな収穫であった。 第2の物語精読に関しては、今年度に発表した論文「婚姻慣習と源氏物語 ―紫の上の結婚経緯をめぐって―」がある。これは、紫の上の妻の座に拘泥する従来の読みを退け、彼女の描かれ方の両義性を指摘したものである。同じく今年度に発表した論文「『源氏物語』明石入道の夢」は、光源氏と明石の君の結婚の契機になった、明石入道の夢告について考察したものである。ここでは日月の夢の意味に着目し、我が国の古代から近世までの用例、さらには中国の事例をも見わたして検討を加え、その上で物語本文の表現に即して『源氏物語』の独自性を探った。以上のように、資料を博捜して当時の慣習を包括的に捉え、なおかつその成果を踏まえつつも物語の文脈に応じた検討を付すことでその虚構の論理を捉えるという考察方法は、本研究における基本方針である。 また本研究の集大成のひとつとして、『源氏物語』に関する成果を書籍にまとめた。本書では、「文学作品を婚姻研究の資料とすべきではない」との考えのもと、歴史的実態を押さえつつもそこから一端切り離し、『源氏物語』の表現や文脈に即して物語における婚姻の描かれ方を探ることで、新たな婚姻研究の方法を模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではその集大成として、最終年度においてこれまでの成果を書籍にまとめることを最終目標としていたが、2年目にあたる本年度中に出版にこぎつけられたことは、大きな進展であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度にまとめた書籍では、考察の中心を『源氏物語』に絞ったものであった。今後は視点を広げ、その考察対象を他作品に移し、そこに描き出される婚姻の様相を研究していきたい。また具体的なテーマとしては、1年目より調査を続けている婚姻居住形態についての分析結果や、婚姻儀礼に関する研究について、具体的な成果をまとめ、発表することを目標としたい。 なお本研究においては、国文学のみならず歴史学などとの学際的交流が必要不可欠であるが、今年度末に出版した書籍では、多分野の成果を広く取り入れるように心がけた。今後は引用者を中心にこの書籍を積極的に送付するなどして、広く批正を請い、更なる発展を期したい。
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Research Products
(2 results)