2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13J06600
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新国 佳祐 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 文処理 / 日本語 / 読点 / 関係節 / 読み時間 / 事象関連電位 / 文章理解 / 眼球運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,文の読みのプロセスにおいて心内での音韻的処理に深く関わるとされる読点(カンマ)が文や文章の処理においてどのような役割を果たすのかについて明らかにすることを目的として,①文の読み時間,②事象関連電位(ERP),および③眼球運動を指標とした実験研究を行った。①および②を指標とした実験研究では,複文構造が判明する時点の異なる2種類の関係節構文(a. 太郎が花子に#施設を訪れた先生を紹介した。/b. 太郎が花子を#施設を訪れた先生に紹介した。)を刺激文として用いた。刺激文aでは動詞「訪れた」が入力された時点で複文構造を仮定せざるを得ないのに対して,刺激文bでは名詞句「施設を」が入力された時点で複文構造を仮定する必要がある。実験の結果,刺激文中の#位置に読点が挿入されていない場合,名詞句「施設を」の読み時間およびERP成文P600の振幅値がb>aであるのに対して,#位置に読点が挿入された場合,「施設を」の読み時間およびP600振幅値のa-b間の差は消失することが示された。この結果から,日本語における読点が,即座に複文構造を活性化させる役割を持つことが示唆された。一方で,動詞「訪れた」の読み時間・P600は,読点の有無にかかわらずa>bであるという実験結果が得られた。この結果から,読点による複文構造の活性化は,直後の入力が単文構造と整合していると,単文構造へのバイアスによって覆るのではないかという仮説を立てた。今後は,この仮説の妥当性を検証すべく,追加的実験を行う予定である。③を指標とした実験研究では,800字程度の長さの文章を材料として,i)一般的に打たれやすい位置に読点を打つ条件,ii)一般的に打たれにくい位置に読点を打つ条件,iii)i,iiの両方に読点を打つ条件,iv)読点を一切打たない条件の4条件での文章の読み中の眼球運動を計測し,現在データの解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定されていた実験研究は,読み時間実験およびERP実験の2つであり,いずれも計画通りに遂行され,得られた結果はほぼ事前に立てた仮説を支持するものであった。文の読み時間を指標とした実験研究と事象関連電位を指標とした実験研究により,文の読み中の音韻的処理と関わりの深いとされる読点が,文処理中のどのタイミングで,どのような役割を果たしているのかについて明らかにした。さらに,データの解析中ではあるが,当初の予定には含まれていなかった,文章を材料とした眼球運動計測実験までを遂行することができた点から,研究課題の進展はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としてはまず,眼球運動実験データの解析および結果の解釈を優先的に行い,より現実場面での読みの状況に近い実験状況(単一の文を読むのでなく,ある程度まとまった文章を読む状況)においても,読点の有無および挿入位置の影響がオンラインで現れるのかどうかを確認することにより,本研究の成果をより現実場面での読みに即して解釈するための裏付け的データを得ることを目指す。さらに,読み時間実験およびERP実験において得られた日本語の読点が文処理において果たす役割についての知見が文の音韻的処理とどのように関連しているのかをさらに深く検討すべく,類似の刺激文を聴覚呈示した際のERPを計測する実験研究を計画している。
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