2013 Fiscal Year Annual Research Report
ガンマ線バーストの残光と母銀河から高赤方偏移宇宙の星生成史を探る
Project/Area Number |
13J06603
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
新納 悠 国立天文台, 光赤外研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | ガンマ線バースト / 銀河 / 金属量 |
Research Abstract |
継続時間の長いガンマ線バースト(以下、GRB)は、低金属な環境で発生すると考えられてきた。しかし、2010年以降に高金属なGRB母銀河が複数発見されたことにより、従来の理解と観測の整合性が問いなおされている。 大質量星は星生成領域に存在するため、GRBがどのような金属量のもとで発生したかは星生成領域からの輝線を用いて推測される。平成25年度、私は近傍銀河M31の星生成領域観測に基づいて星生成銀河内の星生成領域と金属量の空間分布モデルを作り、それらの星生成領域を遠方においた場合に観測から得られる金属量情報と、実際の金属量の関係を調べた。その結果、これまでに分光観測で調べられてきたGRB母銀河の典型的な距離では、観測的に得られる金属量の情報と実際の金属量の間に空間分解能の不足による系統的なズレが生じうることがわかった。このズレは「低金属でなければGRBは起きない」とする従来のモデル予想と、「高金属と思われる環境で発生したGRBが存在する。」という観測事実の矛盾を説明しうるものである。 この成果を論文として発表するため、現在投稿準備を進めている。また、この研究は流体計算による銀河モデルを用いて同種の研究をするための予備研究でもある。この研究ではM31の星生成領域観測に基づくモデルを用いたため、M31とは異なる性質を示すGRB母銀河では状況が異なっている可能性があるが、星生成領域の詳細な観測が可能なほどの近傍には典型的GRB母銀河に似た性質をもつ銀河はない。今後は、流体計算によって様々な性質の銀河での星生成領域モデルを作り、今回得られた結果をより一般の場合について検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究目標達成に必要なシミュレーションコードの開発に専念する計画であったが、最新の観測データを活用することで研究目標の一部が達成可能であることが見いだされ、コード開発に先立って科学的成果の一部を得ることが出来た。この研究により、本研究で調べる効果がGRB母銀河観測に及ぼす影響は予想通り大きいものであることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
観測データに基づく予備研究実施のため後回しにしたコード開発を完了させる。これによって観測データを利用した研究よりも幅広い種族の銀河に対して同様の効果を調べ、結果をより一般化する。また、観測データからは得られないシミュレーションならではの情報を活用して、GRB残光に現れる星間減光・吸収の影響も評価する。
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Research Products
(6 results)