2014 Fiscal Year Annual Research Report
ガンマ線バーストの残光と母銀河から高赤方偏移宇宙の星生成史を探る
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13J06603
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
新納 悠 国立天文台, 光赤外研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 天体爆発現象 / 宇宙進化史 / 国際情報交換:アメリカ、オーストラリア |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続いて、GRB発生環境現場の金属量の真値とその観測値の間に生じる系統的なズレを調べた。近傍銀河M31内にある星生成領域の観測データに基づいたモデル計算を行った結果、GRB発生現場の金属量測定値は観測の空間分解能に大きく依存し、真の値からズレる場合があることがわかった。これは、高金属なGRB発生環境の存在を示唆したこれまでの観測結果が、低金属環境でしかGRBは発生しないとする従来の起源星シナリオと矛盾しないことを示す結果である。昨年度得られた主要結果に加えて、今年度は金属量測定方法ごとに現れる系統誤差の違いを精査し、研究成果の論文としての出版にこぎつけた。 また、モデル研究と並行してGRB母銀河の観測研究も推進した。GRB母銀河の観測は幅広い赤方偏移範囲をカバーする「無バイアスサーベイ」がアメリカとヨーロッパのグループによって各々に推進され観測例が増えている一方で、GRB起源天体の解明に特に重要な意味を持つ低赤方偏移の母銀河の分光観測についてはいまだに10例程度の不均一なサンプルしかない。GRB起源天体の解明にむけて「無バイアスサーベイ」と相補的な役割を果たす「低赤方偏移集中サーベイ」を実現するため、受け入れ研究者の柏川伸成准教授やその学生達の協力を得てGemini望遠鏡への観測提案を行い、2015年度前期に観測時間を得た。 高速電波バースト(FRB)もGRBと並んで興味深い突発天体である。FRBは2007年に初めて検出が報告され、2013年に新たに4例の検出が報告されて研究者の大きな関心を集めるようになった。FRBの起源は全く不明であるが、研究代表者はFRBの起源シナリオの一部が可視光での追観測で検証可能であることを示す試験計算を行い、その結果を論文として出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
高速電波バースト(FRB)は2007年に初めて発見され、2013年にその実在を裏付けられて以降急速に注目をあつめている新種の突発天体である。FRBの正体はまったく不明のだが、本研究課題の主要研究目標の一つであるガンマ線バースト(GRB)との類似性もみられ、関連した現象である可能性も指摘されている。今年度において研究代表者はFRBの正体を観測的に確かめる方法を提案する論文を出版し、その方法が現実的な条件のもとで十分実行可能であることを示した。 また、昨年度までの研究(さらなる精査を経て今年度出版)でGRBの起源の解明には理論モデルの開発と同時にさらなるGRB母銀河観測データの拡充が必要であることが示された。これを受けて、今年度研究代表者はすばる望遠鏡と時間交換協定を結んでいるジェミニ望遠鏡に観測計画の提案を行い、採択された。この観測は現在(2015年度前期)実行中であり、データの取得が待たれる。 上記のFRB研究とGRB母銀河観測計画の立案という当初の計画にない研究に取り組んだため当初予定した数値計算モデルの開発には若干の遅れが生じたが、技術的な主要課題を解決することには成功した。予定外に得られた成果に比して遅れは小さく、全体としては計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
近傍銀河観測データに基づく経験則を用いてこれまでに行った計算で得た結果を、銀河形成シミュレーションを活用してより一般の形態の銀河の場合に適用できるよう拡張する。また、近年急速に発展しているGRB母銀河の無バイアスサーベイのデータと比較可能な理論モデルを準解析的銀河形成モデルに基づいて構築する。また、昨年度ジェミニ望遠鏡に採択された観測計画が実行され次第データ解析を行い、研究代表者がこれまでに作ってきたGRB母銀河モデルとの比較からGRB起源星の性質を制限する。 これまで観測波長ごとにバラバラに公開されていたGRB残光のデータをまとめて整理し、残光放射の標準モデルに基づいて残光の多波長の時間変化を説明できるモデルパラメータ分布を調べる。これによってGRB残光の波長・時間度との光度分布モデルを構築し、この光度分布から予想されるGRB観測データのサンプルバイアスを検証・補正し、GRBの性質の統計的全体像、さらにはそこから示唆される宇宙の星生成史に迫る。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] The Subaru High-z Quasar Survey: Discovery of Faint z ~ 6 Quasars2015
Author(s)
Kashikawa, Nobunari; Ishizaki, Yoshifumi; Willott, Chris J.; Onoue, Masafusa; Im, Myungshin; Furusawa, Hisanori; Toshikawa, Jun; Ishikawa, Shogo; Niino, Yuu; Shimasaku, Kazuhiro; Ouchi, Masami; Hibon, Pascale
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 798
Pages: id. 28, 10 pp.
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] A First Site of Galaxy Cluster Formation: Complete Spectroscopy of a Protocluster at z = 6.012014
Author(s)
Toshikawa, Jun; Kashikawa, Nobunari; Overzier, Roderik; Shibuya, Takatoshi; Ishikawa, Shogo; Ota, Kazuaki; Shimasaku, Kazuhiro; Tanaka, Masayuki; Hayashi, Masao; Niino, Yuu; Onoue, Masafusa
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 792
Pages: id. 15, 15 pp.
DOI
Peer Reviewed
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