2013 Fiscal Year Annual Research Report
茶加工工程でのカテキン分子構造変換機構の解析とその新規機能性物質創製への応用
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13J06608
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
四位 拓也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | theasinensin A / テアルビジン / 茶カテキン腸内代謝 / 嫌気的微生物発酵茶 |
Research Abstract |
年次計画に基づき、以下の研究を実施した。 「生物活性を有する紅茶ポリフェノールの簡便な合成法の確立」 これまでに緑茶カテキンepigallocatechin gallate (EGCG)から紅茶特有の生物活性ポリフェノールtheasinensin Aを大量合成する方法を開発している。この方法は紅茶製造時のカテキン酸化反応の解析を模倣した手法である。したがって、同時に生成する副生成物は構造未解明の紅茶重合ポリフェノールテアルビジンと密接に関連すると推測された。そこで水中で反応を行い副生成物の構造を解析した結果、本反応の主な副生成物はEGCGの重合物であることが明らかになり、テアルビジンに関連するものと推測された。そこでEGCGと茶葉に共存するカテコール型カテキンであるepicatechinの混合物を酸化して重合物を得た。この重合生成物の各種スペクトルデータを紅茶のものと比較したところ、きわめて良く類似しており、テアルビジンの化学構造解明に大きく寄与する結果が得られた。 「緑茶カテキン腸内代謝産物のインビトロでの製造」 茶カテキンの消化管からの吸収は数%に過ぎないことから、その生物活性発現にカテキン類の腸内細菌代謝産物が関与している可能性が示唆されている。一方、当研究室ではそのカテキン代謝産物が嫌気的微生物発酵茶に含まれていることを明らかにしている。そこで、ミャンマー産嫌気的微生物発酵茶ラペソーの成分研究を行ったところ、同様のカテキン腸内細菌代謝産物が主成分として得られることが分かった。次に、緑茶とラペソーを混合して嫌気的条件で混合発酵を検討した。その結果、緑茶に対して1/20量のラペソーを加えておよそ37℃で二週間嫌気的に発酵させることで、茶カテキン腸内細菌代謝の再現および代謝産物の大量供給法を確立することに成功した。また、代謝産物と考えられる二種の新規化合物を分離した。これら成分の生成機構を考察することで、茶カテキンの嫌気的条件下における微生物代謝経路の一部を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、紅茶の主成分であり、多くの生物活性が報告されながら構造が未解明であった紅茶重合ポリフェノールの推定構造が提出できたことは大きい進展である。また、茶カテキンの真の活性成分と推測されるカテキン腸内細菌代謝産物を多量製造する方法を開発し、しかも、この技術は産業的応用も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
「生物活性を有する紅茶ポリフェノールの簡便な合成法の確立」 大量合成が可能となったtheasinensin Aについては現在活性評価を行っており、今後は紅茶重合ポリフェノールの生成機構について詳細な検討を行う。 「緑茶カテキン腸内代謝産物のインビトロでの製造」 茶カテキン腸内細菌代謝産物の大量供給についてはおおむね達成できた。今後は、酵素反応や有機化学的手法を用いた再現を試みるとともに、生成物の機能性評価を行う。
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Research Products
(2 results)