2014 Fiscal Year Annual Research Report
長期流域水収支データを用いた森林の洪水緩和機能の定量的解析と評価
Project/Area Number |
13J06722
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
五名 美江 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 森林の洪水緩和機能 / ピーク流出量 / 直接流出量 / 降水量 / 水収支 / 長期水文データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、A(過去再現)森林植生の変化によって森林の洪水緩和機能がどのように変化したのかを定量的に解析し、過去90年のデータから明らかになった結果を踏まえて、B(未来予測)日本の森林生態系および地球温暖化の将来シナリオを想定した場合、森林の洪水緩和機能がどのように変化するのかをシミュレーションする、ことを目的としている。2年目は、未来予測のための準備も行ったが、1年目の研究成果から新たに得られた仮説について、過去データを掘り下げた研究がさらに必要と判断し、下記を実施した。 森林の洪水緩和機能におけるリター層の役割について ・白坂試験地 小流域(北谷・南谷) 1954年~56年に行われた小流域全体のリターを剥ぎ取る実験の前後で精密に観測された降水量・流出量データを用いて、対照流域法により、小流域全体のリター剥ぎ取りが水収支・ピーク流出量・直接流出量に及ぼす影響を再検討することにより、小流域スケールで地表面がリターに被覆されていることの水文学的な重要性を明らかにすることを目的とした。対照流域法を用いて処理流域(北谷)と対照流域(南谷)とし、1951~53年を処理前の期間、1954~56年を処理後の期間とした。 リター層を剥ぎ取ったことにより、①年損失量は減少し、その減少量は年損失量が大きい年ほど大きくなる傾向にある、②大出水時のピーク流出量は約1.4倍に増加し、ピーク流出量の生起時刻は平均5.6分早くなる、③大出水時の直接流出量は約10%増加したことがわかった。本研究のような観点でリター層が流出に及ぼす作用に関する既往研究はほとんどなかったが、森林流域における水循環プロセスにおいてリター層は様々な作用を持っており、大出水時においても、それらの作用は流出に影響を及ぼすことを本研究で明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去90年間蓄積された水文データを用いた研究を精力的に進め、研究開始当初には想定していなかった新たな研究成果も得られ、改めて長期の過去データを定量的に解析することの重要性を認識するとともに、得られた成果は米国における国際会議および国内の複数の学会で発表したほか、成果を論文にまとめて投稿した。過去のデータから未来を予測する研究については、その準備作業として過去80年間の時間雨量データを生成する作業を完了した。過去再現は期待どおり順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去再現に関しての成果のうち、投稿に至っていないものについては、早期に論文として投稿する。過去のデータから未来を予測する研究については、その準備作業として過去80年間の時間雨量データを生成する作業を完了したので、それらのデータを用いた解析を行い、GCMアウトプットを用いた未来予測データの準備や、統計的ダウンスケーリング、バイアスコレクションを行う予定である。
|
Research Products
(10 results)