2013 Fiscal Year Annual Research Report
放射線照射による海馬認知機能障害における新生ニューロンの意義について
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13J06766
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 欣史 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 放射線照射 / 認知機能障害 / fMRI / 超高磁場MRI |
Research Abstract |
脳腫瘍治療に用いられる放射線治療の様に、脳への放射線照射により認知機能障害が観察される事が知られている。特に認知機能に関与している海馬に放射線が当たる事により顕著に観察される。しかし、脳内のネットワークに関してどの様に影響しているのかは分かっていない。そこで本研究では、放射線照射による認知機能障害のメカニズム解明を目的とし、海馬ネットワーク変化に着目して研究を行なった。海馬ネットワークを解析するため、脳全体のネットワークを非侵襲的に解析可能なfMRIを用いた。さらに脳内の構造的変化を捉えるために、MRIを用いて脳内の体積変化を解析した。研究対象は放射線照射を行なったマウスと放射線治療を受けた上咽頭ガン患者(台湾高雄医科大学との共同研究によりリクルート)とした。研究計画に記載したマウスの生理学実験は行えていない。マウスMRI実験では、高分解能のデータを得るため、超高磁場MRI装置(14.1tesla)を用いた。その結果、放射線照射後、白質(extemal capsule)の体積増加が観察された。マウスfMRI実験は現在行なっている。上咽頭ガン患者を対象にしたMRI実験の結果では海馬と前頭葉(前部帯状回)とのネットワークが上昇している事が分かった。また白質(external capsule)の体積増加が観察された。さらに海馬ネットワーク変化と白質の体積変化には正の相関がある事が分かった。マウス及びヒトの実験結果から、放射線照射により白質の体積増加が示唆された。これにより、海馬と前頭葉のネットワークに異常が生じているのではないかと考えられる。海馬は認知機能に重要な領域で前頭葉との結び付きも強いため、本研究で得られた結果は放射線照射による認知機能障害のメカニズムを解明するための重要な情報であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線治療を受けた患者を用いたfMRI研究は順調に進める事ができた。しかし、マウスを用いた研究では、生理学実験があまり進められていない。またマウスのfMRI実験においても、装置開発段階のため、fMRIを用いての放射線照射後の神経活動のデータが得られていない。マウスfMRIデータの収得は今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスを用いた研究に関して、生理学実験からfMRI研究に変更する。現在、マウスfMRI研究が可能な超高磁場MRI装置を独自に開発しており、開発後、放射線照射による影響をfMRIにより解析する予定である。高性能傾斜磁場コイル及びマウス用RFコイルを開発し、マウスfMRIに適した装置を構築している。問題点としては、傾斜磁場コイルの性能を妨げる渦電流の発生がある。シールドコイルを作成する事により、この渦電流発生を抑制する計画である。渦電流の抑制はMRIの高速撮像を可能にするため、大変重要な問題である。
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Research Products
(2 results)