2014 Fiscal Year Annual Research Report
地域特性に適合する都市温暖化の緩和・適応策の基礎となる市街地熱環境評価技術の開発
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13J06806
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
弓野 沙織 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 緩和・適応策 / 都市温暖化 / 地球温暖化 / ヒートアイランド / CFD / 放射解析 / WRF / 地域特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.都市温暖化に対する緩和・適応策を両方の観点から総合的に評価するための評価フレームの拡張 25年度に考案した防災分野のリスク評価の概念を援用した新たな屋外温熱環境評価手法(都市温暖化への適応効果の評価手法)を改良し、実際の市街地の熱中症搬送リスク評価を行った。さらに、このリスク評価の概念に人間の移動の概念を加え、人間の選択する歩行経路全体での熱中症発症リスクの評価を可能とするため、研究の第一段階として人体生理量と温熱環境の同時移動計測を行い、歩行時の物理環境と人体の反応の関係を分析した。 2.人体生理量の予測モデルの適応可能性の検証 これまで室内環境分野で広く開発されてきた人体生理量(皮膚温、深部温度など)の予測モデルが屋外の歩行者を対象とした場合も生理量を精度よく予測できるか検証するため、上述の同時移動計測の結果を用いて人体生理量の予測モデルの計算値との比較を行った。 3.指向性反射を組み込んだ放射解析の精度検証 25年度に既存の放射解析プログラムに指向性反射の影響を組み込み、昨年度はこの精度検証を行った。単純な解析モデルを設定し、指向性反射面と受照面のメッシュ分割と解析精度の関係を分析した。 4.解析システムへの空調負荷計算の組み込み 放射解析に基づく非定常熱収支解析内で、建物の使用スケジュールに応じた時刻ごとの内部発熱量も考慮した詳細な熱負荷計算を行い、人工排熱量を流体計算の入力条件として出力するシステムを作成した。 5.樹木の密度差による蒸散量の分析と樹木の形状・配置の効果分析 25年度に引き続き、実大ケヤキの蒸散量の長期測定を行い、蒸散量と密度差の関係を分析した。また昨年度8月には対象ケヤキ周辺で短期の温熱環境測定を行い、測定で得られたパラメータを基に放射・対流解析を行い、樹木形状・配置と蒸散効果の影響範囲の関係を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・対策技術の評価フレームを検討していくうちに、都市温暖化への適応効果を評価する際に、人間の熱的な生理反応を詳細に予測する必要があると思い至り、街区スケールの温熱環境の高精度予測システムを構築するうえで、当初の計画にはなかった人体生理量の予測モデルに関しても精度の検討をすることとした。そこで昨年度は人体生理量と温熱環境の同時移動計測を行い、結果を用いた人体生理量の予測モデルの計算値との比較によるモデルの屋外の歩行者に対する適用可能性の検証を行うことができた。 ・実大ケヤキの蒸散量測定に基づく樹木の蒸散モデル開発に関しては、密度差による蒸散量の違いを明らかにし、モデルの基礎的な分析を行うことが出来た。さらに昨年度は当初の計画に加え、対象ケヤキ周りで大規模な短期測定を行い、樹木の効果を放射・対流解析に組み込むために必要なパラメータを取得し、放射・対流解析に基づく形状や配置の違いによる温熱環境改善効果の変化を分析し、適応策として効果的に街路樹を導入するための知見を得ることが出来、計画以上の進展があったといえる。 ・解析システムへの空調負荷計算の組み込みに関しては、ほぼ予定通りに完了することが出来た。 ・コレスキー分解に基づくLES解析の流入変動風作成手法の開発に関しては申請者が所属する研究室で別途検討が行われており、現在はその手法を学習している段階であり、やや遅れている。また、LESを用いたCFD解析と放射解析の連成計算と屋外都市模型COSMOでの測定結果の比較によるRANS解析の予測精度の検証に関しては、RANS解析の収束が遅く、現在もRANS解析に取り組んでおり、やや遅れている。 ・以上のように、予定以上に進展している部分とやや遅れている部分があるが、総合的に考えると当初に想定していた以上の成果が挙がっているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.LES解析、測定結果との比較によるRANS解析の精度検証 今後、コレスキー分解に基づく流入変動風生成手法に基づき、WRFによる解析結果からLESの流入変動風を作成する手法を開発し、この手法を採用したLESを用いたCFD解析と放射解析の連成計算を行い、RANSによるCFD解析と放射解析の連成計算結果、日本工業大学の実験サイトである屋外都市模型COSMOで修士時代に行った測定結果との比較を行い、数値解析の予測精度の検証とRANSによるCFD解析に必要な改良を加える。 2.熱中症発症リスク評価システムの改良 昨年度に引き続き、より多くのサンプルに対して典型的な夏季の条件の下、人体生理量と温熱環境の同時移動計測を行い、人体生理量の予測モデルの精度の追検証を行うとともに、リスク評価に重要な生理量を検討し、人間の選択する歩行経路全体での熱中症発症リスクの評価を可能とする。 3.評価対象都市の選定 都市の緯度と海からの距離といった地理的条件、都市の構造特性(人口、建蔽率、排熱密度等)から都市を分類し、条件の異なるいくつかのグループの中から4.の検討を行う都市を選定する。 4.解析システムの省資源化 解析プログラムの並列化、省メモリ化等を進め、なるべく詳細な解析を行えるようにする。 5.街区スケールの温熱環境の高精度予測システムを用いた地域特性に見合った合理的な環境デザイン方策の提案 25年度から行っている解析システムの改良点を統合した予測システムを用いて、3.で選定した都市において現状の街区の解析・評価を行い、その街区の都市温暖化への緩和・適応の観点からの問題点を抽出する。そこで効果が見込める環境技術(壁面緑化、高反射化、窓面の日射対策、街路樹等)を施した場合の温熱環境の解析・評価を行い、気候特性と都市構造の特性に見合った環境効率の高い都市デザインの方策を提案する。
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Research Products
(26 results)