2013 Fiscal Year Annual Research Report
無細胞翻訳系を用いたSecYEGトランスロコンの機能発現メカニズムの解析
Project/Area Number |
13J06852
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松林 英明 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | SecYEGトランスロコン / PURE system / 無細胞翻訳系 / liposome / 脂質 / 膜タンパク質複合体 / タンパク質膜透過 / タンパク質膜挿入 |
Research Abstract |
大腸菌のトランスロコンであるSecYEGを無細胞翻訳系によって各遺伝子から合成し再構築する実験系を用いて、SecYEGが脂質膜上で複合体を形成し機能をもつために必要な脂質条件の解析を行った。 研究を始める前の段階で、大豆由来の脂質抽出物から調整したlipo80meの場合にSecYEGの活性を確認できることが確かめられていたため、まず大腸菌由来の脂質抽出物からliposomeの調整を行った。しかし、翻訳系の塩条件ではliposomeが凝集体を形成し、解析に適さないことが判明した。そこで、合成脂質を用いてボトムアップにliposōmeを調整する手法に移行した。結果として、過去の報告と同様、SecYEGのタンパク質膜透過活性にはPE (Phosphatidylethanolamine)やPG (Phosphatidylglycerol)が必要であることが確かめられた。しかしながら、合成脂質を用いた場合の活性は大豆の脂質に比べると有意に低いことが明らかになったため、大豆脂質中にSecYEGの活性に寄与する脂質の存在が示唆された。また、複合体形成自体はPC (Phosphatidylcholine)のみのliposomeでも観察されることから、サブユニットどうしの相互作用は任意の脂質条件でおきうることが示唆された。さらに、大豆脂質中の因子を探索するため、さまざまな溶媒による分画方法についての検討から最適な分離条件を確立し、今後SecYEGの活性に関わる脂質の同定と作用機序の解析を行うための足がかりを得た。 膜タンパク質複合体の翻訳とその後の膜上でのアセンブリについて、in vitroでその過程を解析した例は少なく、本研究における脂質条件の解析の成果が今後の研究の進展のために重要な知見になると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、SecYEGの複合体形成、機能発現に関わる脂質条件の解析については、大豆脂質抽出物の中からSecYEGの活性に寄与する脂質因子を同定し作用機序の解析を行う。また、同定された脂質を大腸菌の脂質と比較し、その構造や機能の関係性について解析する。 さらに、上記で得られた脂質条件を基盤として、SecYEGが翻訳されてから活性型の構造を形成し機能するまでの過程における、他の膜タンパク質との関係やその生合成機構についてより詳細な解析を進める。
|
Strategy for Future Research Activity |
SecYEGの生合成過程について、翻訳、膜挿入、複合体形成、機能発現の各ステップを解析する方法を確立することができ、確立した方法を用いて、'複合体形成に必要となる脂質条件を検討することができた。さらに、脂質抽出物の中からSecYEGの活性に寄与する脂質因子の存在を見いだしたこと、その脂質について分離、精製方法の検討が順調に進展していることから、このように評価した。
|