2013 Fiscal Year Annual Research Report
可視-近赤外領域の光を効率的に利用できる二酸化炭素還元光触媒系の構築
Project/Area Number |
13J06913
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
北川 裕一 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | 二酸化炭素光還元 / クロロフィル / 赤色光 |
Research Abstract |
地球温暖化が問題視されるようになり、二酸化炭素光還元の技術は大きな注目を集めている。Lehnらにより、レニウムビピリジン錯体を用いた効率的な二酸化炭素光還元が既に報告されているが、この錯体は450nm以下の紫外-可視領域の光しか吸収できない。近年、レニウムビピリジン錯体に対してオスミウムトリスビピリジンを電子ドナーとして用いた系において、600nm以上の可視域の光を利用した二酸化炭素光還元触媒も報告された。これらの結果は人工光合成実現に向けて非常に重要であるが、このようなMLCT遷移に基づく吸光係数が比較的小さく、また650nm以上の長波長側に強い吸収帯を有する光増感剤を用いた系の報告はない。そこで本研究は、クロロフィル誘導体に着目した。この分子は600nm-700nmに非常に強い吸収帯を有すると共に、クロリン骨格、及び周辺置換基のアルキル鎖に基づく高い還元電位を有する。このクロロフィル誘導体と二酸化炭素光還元触媒のレニウムビピリジン錯体の光化学的性質、及び二酸化炭素光還元能を評価した。 シアノバクテリアの一種であるスピルリナから抽出したクロロフィル-aを原料として、3位にヒドロキシメチルを有するクロロフィル誘導体を合成した。この末端の水酸基とカルボキシル基を有するレニウムビピリジン錯体をエステル縮合させることで連結系分子を合成した。この連結分子を用いて長波長光の効率的な光捕集(660-670nm)を利用した二酸化炭素光還元に成功した。本結果は、二酸化炭素光還元触媒の可視光応答性の範囲を広げる意味で重要である。また、このクロロフィルは簡単な修飾により還元力・励起エネルギーを上げることが可能であるため、600nm以上の長波長光を利用した高効率の二酸化炭素光還元触媒開発の観点からも重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標である可視-近外赤領域の効率的な光捕集に利用した二酸化炭素光還元に成功した。さらに、ドナー(クロロフィル誘導体)・アクセプター(レニウム錯体)の周辺置換基変化に伴う連結分子の光化学的性質の変化まで調べており、この系における二酸化炭素光還元効率を高めるための有用なデータが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により得られたデータを基に、ドナー分子(クロロフィル誘導体)の励起エネルギー・酸化還元電位、及びアクセプター分子(レニウムビピリジン錯体)の還元電位を最適化することで、効率的な光捕集を利用した効率的な二酸化炭素光還元触媒を検討する。また、ドナー分子として用いたクロロフィル誘導体は比較的光安定性が高くないという問題がある。そのため光安定性が高く、効率的な光捕集、及びアクセプター分子に効率的な電子移動(またはエネルギー移動)が可能な新規ドナー分子の探索が必要である。
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Research Products
(3 results)